岸田首相にほしいサッチャーの道徳的勇気 愛されない覚悟で経済再建

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編集委員・原真人
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記者コラム「多事奏論」 原真人

 池田勇人の「所得倍増」、田中角栄の「日本列島改造論」。時の政権がバラ色の未来を描き、国民に希望や夢を与える。そんな試みはいつの時代にもある。

 最近では第2次安倍政権の「アベノミクス」がそうだ。異次元の量的金融緩和を起爆剤に高成長を実現、強い日本経済を取り戻す、と高らかに宣言した。

 とはいえ、国が貧しく国民が若くて人口が増えていた時代と、経済が成熟し超高齢化と人口減少が進む現代とでは求められる夢や希望のかたちがまったく異なる。

 アベノミクスの掲げる夢は時代を誤っているし、その手法はあまりに危険だ。私は紙面で警鐘を鳴らしてきたが、その懸念がどれだけの人に共有されたかわからない。

 「あなたは批判するが代案はあるのか」

 以前、アベノミクスを肯定する大学教授からそう問われたことがある。「バラ色でない案ならある」と答えたら、「それじゃあ話にならないね」と突き放された。

 岸田政権でもアベノミクス体制は続く。異常な金融緩和にどっぷり依存し、ときに給付金のようなバラマキ策もとる。陰では巨大な借金のリスクを先送りしながら。

 政権がそのような安易な立場をとり続けるとき、現実的ではあっても不人気な対案を野党が示すのは簡単ではなかろう。

 それにしても先の衆院選での与野党の経済論争はひどかった。あちらが消費税の減税と言えば、こちらは廃止、こちらが18歳以下に給付金10万円と言えば、あちらは全員に10万円。こぞって人気取りに走った。

 これぞ「バラマキ合戦」と、そこに冷や水を浴びせたのが財務省の矢野康治次官の月刊文芸春秋への寄稿である。

 「このままでは国家財政は破…

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    三牧聖子
    (同志社大学大学院准教授=米国政治外交)
    2021年11月13日13時7分 投稿
    【視点】

    「サッチャーにはシンパシーはあったがエンパシーはなかった」。秘書を務めたティム・ランケスターの評であり、ブレイディ・みかこ氏の『他者の靴を履くーアナーキック・エンパシーのすすめ』(文藝春秋社)の中で紹介されている。 サッチャーは誰にで

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    パトリック・ハーラン
    (お笑い芸人・タレント)
    2021年11月11日15時24分 投稿
    【視点】

    サッチャーは間違いなく精神力も政治力も備わった強いリーダー。彼女の「嫌われる勇気」は改革を押し通すために必要だったとしたら、もちろん真似してもいいかもしれない。しかし、サッチャーは数百万人の失業を目の当たりにしながらセイフティーネットの弱体