賃金アップ「首相の思い入れ強い」 介護・保育から他職種へ広がるか
岸田政権が分配戦略の柱と位置づける、看護や介護、保育で働く人たちの給与引き上げに向けた議論が9日、スタートした。政府が「全世代型社会保障構築会議」と「公的価格評価検討委員会」の合同会議を初めて開催。待遇の改善策を話し合った。岸田文雄首相は「(19日に公表する)今回の経済対策で必要な措置を行い、前倒しで引き上げを実施する」と述べた。
岸田首相は会議で「看護、介護、保育、幼稚園などの現場で働く方々の収入の引き上げは最優先の課題」と強調し、賃上げなどを議論する春闘に先行させる方針を示した。
看護や介護などの分野で提供されるサービスの価格は政府が決めており、岸田首相は9月の自民党総裁選中から、この「公的価格」を抜本的に見直すことを訴えてきた。社会を支える人たちに報いるとともに、中間層の所得を増やすことで、分配機能の強化につなげるのがねらいだ。
こうした分野では待遇の低さが課題とされ、今までも処遇改善による賃上げが実施されてきた。ただ、介護や保育の分野の給与は全産業の平均賃金よりも依然として低いまま。今回の議論でどこまで実効的な取り組みになるかが課題だ。
新たな検討委員会は、補正予算や2022年度当初予算の編成もにらみつつ、年内に中間的な整理をする予定で、議論の期間は2カ月足らず。短期間のなかで財源や今後の負担についてどこまで踏み込めるかは見通せない。(石川友恵)
他の職種への「呼び水」戦略
岸田政権が看護や介護、保育の現場で働く人たちの所得向上に真っ先に取り組むのは、格差是正のための「分配」として打ち出せる数少ない具体策だからだ。まずは公的価格を上げることで、他の職種の賃金引き上げの「呼び水」とする戦略を描く。
当初は、年末に決める来年度当初予算案から賃上げを反映させる予定だったが、8日開いた「新しい資本主義実現会議」(議長=岸田文雄首相)の緊急提言で、政府が19日にまとめる経済対策に「前倒しで引き上げを実施する」ことを盛り込んだ。内閣官房幹部は、「人件費なので安定財源がいる。賃金引き上げをやるために、簡単ではないが、財源を寄せ集めなければならない」と、今後の予算編成作業で難題に直面しそうだという。
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