自閉症の芸術家、契約社員に 企業雇用で創作に専念

宮田富士男
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 クレヨンや絵の具で彩色した和紙を使い、生き物を表現する切り絵で知られる自閉症のアーティスト星先こずえさん(36)。昨年11月に障害者アーティストを支援する会社に契約社員として採用され、安定した収入を得てさらに意欲的に創作に打ち込んでいる。

 星先さんは福岡県大野城市の自宅で平日の6時間、創作にあたる。1カ月にA3サイズの2点を提出するのがノルマだ。1点は自由作品、もう1点は会社が指定したSDGsのテーマに沿った課題作品だ。勤務時間外には公募展や個展に出す作品にも取り組む。

 九州産業大芸術学部を卒業した後、定職に就かず公募展や個展に出す切り絵を描いてきた。「だらだらと完成を先延ばしにすることもあった」が、現在では決まった時間にきちんと取り組むようになった。定収も得られて「気に入った画集をためらわずに買えます」と喜ぶ。個展の費用にもあてているという。

 星先さんをサポートするのが、障害者雇用支援のメンバーズギフテッド(東京)だ。デジタル技能を持つ地方在住の障害者が首都圏の企業に就職し、リモートで働くのを支援してきた。

 そのアーティスト版にあたるのが、この「ソーシャルアートジャパン」事業で、昨年6月に始まった。アーティストを発掘して企業に紹介し、定期面談や体調管理などで就業を支援する。また、SDGsなど企業が課したテーマについて解説し、作品で具現化するのを助ける。

 「能力がある地方のアーティストに安心してアート活動に専念してほしい」と小峰正仁事業部長は話す。同社はアーティストの発掘とともに、国内外で採用企業を開拓していく方針だ。

 採用した企業は障害者雇用率に算入でき、社会的課題に力を入れていることを作品を通してアピールできる。星先さんを採用したのは、ギフテッド社の親会社で東証1部上場のデジタルマーケティング企業メンバーズ(東京)。星先さん以外に約10人を採用している。

 障害者文化芸術活動推進法が2018年に施行され、障害者の創造活動や鑑賞機会は増えている。九州大大学院芸術工学研究院の長津結一郎助教は「障害者アーティストの選択肢が増えるのはいいこと。採用企業でアートを媒介にして交流が生まれ、職場環境の多様性が実現するきっかけになれば」と話した。(宮田富士男)