カレンダー配布は「言葉遣い」の問題? 郵便局長会メールを検証

藤田知也
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 多くの郵便局長が経費で買ったカレンダーや顧客情報を政治流用した疑いが出ている問題で、全国郵便局長会は「言葉の使い分け」が不適切な例はあったものの、政治流用は「全くなかった」と否定した。しかし、言葉遣いの問題で本当に説明がつくのか。朝日新聞が入手した1通のメールをもとに検証する。

 朝日新聞の取材では、少なくとも七つの地方郵便局長会に属する10都県の局長が「地域の局長会幹部から昨年、カレンダーは『支援者』を中心に配るよう指示された」と証言した。局長らによると、この「支援者」は局長会の政治活動に賛同しそうな親族や友人・知人らを指す。政治活動は3年に1度の参院選に向けたもので、「支援者」集めは局長会が組織候補を擁立する前から始まる。候補が決まって後援会が発足すると、「支援者」に後援会入会を働きかけていくのが一般的だという。

 ただ、局長会の朝日新聞への2日付の回答書は、そうした現場の証言と全く異なるものだった。「支援者」とは「郵便局への理解が深く、郵便局を支援してくれる」顧客のことを指すというのだ。局長会が郵便局の経費で買ったカレンダーを「支援者」に配るよう局長に求めたのは政治活動への流用ではなく、会社の営業施策の一環だったとする。

 一方、「支援者」や政治活動の一環で集める「後援会会員」といった言葉をめぐり、事務連絡や会議で「用語を明確に区別できていなかった」例があるとして、「今後は注意する」とも回答した。

 ここで、朝日新聞が入手した「お願い【カレンダー、自由民主等の取組について】」と題した1通のメールを見てみよう。メールの送信日は昨年12月2日。ある地方局長会の幹部間で共有されていたもので、全国郵便局長会の役員から各地方会あてに送られたとされる。地域の局長会が局長にカレンダーを配るよう現場に求めた根拠にもなっていた。

 このメールでは、カレンダーの配布について、こんな記述がある。なお、「自由民主」とは、全国郵便局長会が参院選で組織内候補の公認を得ている自由民主党の機関誌だ。

 〈役員会や政治問題専門委員会において、郵便局利用者・支援者対策として、今年末に原則、訪問による「カレンダー」や「自由民主」の配布をお願いし、すでに活動いただいている。(中略)12月の休日等を有効活用し、計画的かつ確実に対応いただくよう、適切な指示、指導をお願いする〉

 まず、ここでいう「支援者」が局長会のいう「郵便局を支援してくれる」顧客だとして、なぜ自民党の機関誌を配るのか。顧客相手に政治活動をしているのか、という疑問が出てくる。

 局長会が「休日の活用」を指示していることも気になる。現場の局長の間でも、政治活動は業務中を避けて休日に行うのが常識だ。しかし、カレンダー配布が営業施策なら、なぜ「休日を活用」するのかという疑問が出てくる。

 このメール内容も含む朝日新聞の質問に対し、局長会は10月11日付の回答書では、「今後は誤解を招かぬよう配布の趣旨をさらに徹底していく」と回答。今月2日付の回答書では、言葉の使い分けで不適切な例があったとも認めた。ただ、具体的にどの文書が不適切だったのか、どんな誤解を現場の局長らに与えたと考えているのかは、回答書では記載がなかった。

 局長会が質問に答えなかったのは、朝日新聞が入手した「カレンダーお届け先リスト」についても同様だ。近畿地方郵便局長会が昨年、カレンダーの配布相手を名簿化し、参院選の投票行動まで評価する、この名前がついたファイルを局長らに配っていたことが取材で判明している。このファイルでは、カレンダーの届け出先の名簿がワンタッチで「支援者」や「後援会」の名簿に切り替えられ、入力した個人情報がそのまま反映される仕組みになっていた。局長向けにファイルの使い方を解説するネット動画では「三様式統一名簿」とも解説されている。

 カレンダーの配布先が「顧客」であれば、近畿地方会では「顧客の投票行動」を評価するよう促していたことになる。さらに、顧客であるはずの名簿を「後援会名簿」へとワンタッチで切り替えるファイルがなぜ必要になるのか。疑問はなお尽きない。

 局長会の問題は言葉遣いというより、顧客への営業と政治活動の指示が一緒くたになされていることにあるのではないか。

 そもそも、任意団体でしかない局長会が郵便局の業務の一環であるカレンダー配布の指示をしていること自体が問題視されている。日本郵便は取材に対し、カレンダー配布は「(政治活動の)支援者対策として行うものではない」と回答。局長会がカレンダーの配布方法を指示することについては「当社以外の者が業務上の指示を出すことは不適切だ」としており、実態の解明を急ぐ方針だ。(藤田知也)