としまえん「古城の食堂」残して 専門家「歴史の継承に不可欠」

御船紗子
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 昨年8月、94年の歴史に幕を閉じた遊園地「としまえん」(東京都練馬区)に残る建造物「古城の食堂」について、区などが都に調査・保存を要望している。築90年超とみられる英国風建築で、専門家は「遊園地の歴史を証言するうえで貴重」と指摘する。

 1926年開園のとしまえんは、世界最古級の回転木馬「カルーセルエルドラド」があり、人気を集めた。「古城の食堂」は園の南東部、豊島園駅すぐの正門近くにある建物で、遊園地の年間会員「木馬の会」の事務所として使われていた。

 国内の遊園地に詳しい日本工業大の安野彰教授(近代建築史)によると、建物は戸野琢磨氏(1891~1985年)が手がけた。景観にこだわって造園する「日本人初のランドスケープアーキテクト」として知られる。コンクリート造りとみられ、英国風の古城に似せた外観だが、屋根をバルコニーとして使ったり、支柱なしで階段を設置したりと、建設当時の新しい建築技法が使われている。「近代建築の事例としてとても希少」と話す。

 都は、園の跡地を含むエリアに防災機能をもつ都立公園を整備する計画だ。造る予定の練馬城址(じょうし)公園について、都の審議会が2月までパブリックコメントを募ったところ、古城の食堂を「残してほしい」との声が71件寄せられた。これに対し、審議会は4月、「今後、設計などで意見も参考に検討する」としている。

 日本建築学会関東支部は今年7月までに、建物の保存・活用を見据えた「専門的な観点からの現況調査」を行うよう都や区などへ要望した。これを受けて区は7月と9月、建物の価値の調査や調査を踏まえての保存・活用の検討、保存・活用出来ない場合の理由の説明、を都に求めた。区企画課は「開園初期からあった建物。残してほしいという声があることを尊重してほしい」と話す。都公園緑地課は「引き続き検討していく」との立場だ。

 都は公園のテーマについて「都民に親しまれてきた土地の歴史・風土を生かす」とも説明している。安野教授は「遊園地時代を含めた土地の歴史の継承のためにも、この建物は不可欠だ。価値を判断するために、まずは調査してほしい」と話した。御船紗子