ワイン産地、集客じわり 山梨県

永沼仁
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 新酒ワイン「山梨ヌーボー」が解禁され、11月は山梨県内ワイナリーが活気づく時期だ。新型コロナウイルスの感染も落ち着き、「ワインツーリズム」などイベントも復活、首都圏からの愛飲家も増え始め、産地も明るさを取り戻しつつある。

 「ずっと家にこもっていたので、久しぶりにみんなで旅行と思い、ここに来ました」

 6日午前、笛吹市のJR石和温泉駅前。東京方面から電車で来た人たちが、ワイナリーや飲食店、見どころが記された地図を手にバスに乗り込んだ。グループで来た女性は「これから、ゆっくり回ってきます」などと語った。

 2年ぶりに始まった秋のワインツーリズム。徒歩やバスなどを使い、定額で自由にワイナリー巡りを楽しんでもらうイベントだが、昨年はコロナ禍で中止に追い込まれた。

 復活を決めたのは9月末。通常なら3カ月はかかる準備を急ピッチで整えた。「地域の人たちとお客さんが喜ぶ顔が見たかった」。主催団体の代表理事、大木貴之さん(50)はそう振り返る。

 ワクチン接種やPCR検査陰性が参加の条件。証明書を確認するなど感染対策を徹底した。笛吹市内を中心にルート設定した初日は、200人弱が訪れた。例年より少ない規模だが、ワイナリー側の表情は明るい。

 「リピーターが多くて、うれしかった」。一宮地区にある「新巻葡萄(ぶどう)酒」の中村紀仁社長(34)はそう話す。家族経営のため、販売に大きな力を割けない。「ファンを増やすことが大事。来場者が多いとお客さんと話ができないから、このぐらいでもいい」

 同じ地区にある日川中央葡萄酒では、蔵を改造した試飲室が完成間近だ。堀内孝社長(67)は、「ツーリズムの効果もあり、今後は、ワイン好きの人たちが少しずつ増えてくる。その動きを取り込んでいきたい」と期待を語った。

 秋のワインツーリズムは、月内の土日にも開かれる。ネットによる事前予約が必要。

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 ワイナリーの集積する山梨県甲州市でも、愛飲家が戻りつつある。大手のメルシャン(東京)は6、7の両日、勝沼ワイナリーで「勝沼ワイナリーフェスティバル」を開いた。

 通称、勝フェス。コロナ禍以前は数千人が訪れる人気だったが、昨年はオンライン主体のイベントに切り替えた。今年は参加者を限定したが、2日間で約200人が来場した。

 「ずっと家飲みだったので、久しぶりの開放感。旅と食とお酒が一緒に楽しめるなんて最高です」。東京から来た50代の女性は青空の下、友人3人と笑顔でグラスを交わした。

 1社単独ではなく、近隣ワイナリーとの連携を強めており、昨年の5社から今年は11社に参加ワイナリーが増えた。醸造家らを招いたトークショーや飲み比べも好評で、担当者は「産地全体を底上げし、アピールするイベントになった」と話す。

 市内でつくられたワインを販売している「勝沼ぶどうの丘」も、今後の客足に期待を寄せる。山梨ヌーボーの解禁された3日の人出は今季最高。平日の宿泊予約も月内は好調だという。

 今後も23日まで、新酒やスパークリングワインの提供を続け、集客に力を入れる予定だ。「早くコロナ禍前の人出に戻したい」(永沼仁)