プロ初完投・初完封は重圧の舞台で ヤクルト奥川「借りを返せた」

藤田絢子
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(10日、プロ野球クライマックスシリーズ最終ステージ ヤクルト4―0巨人)

 背番号「11」が九回のマウンドに駆け出した瞬間、本拠・神宮のファンからは大きな拍手がわき起こった。それもそのはず。育成途中にある奥川恭伸のこれまでの最長は、7回だったからだ。一足とびに試合を完結させようとしていた。

 1死一塁から、スライダーで4番丸佳浩のバットを誘い出し、三ゴロに仕留めた。ウィーラーには145キロのまっすぐで押した。中堅・塩見泰隆のもとに白球が収まると、両手を上げて大喜び。「ずっと緊張していた。初めてほっとしました」

 CS最終Sの開幕戦という大舞台でプロ人生初の完投・完封勝利。20歳での達成はCS最年少だ。

 9回をわずか98球、6安打無四球。持ち味の制球力を生かしながら、ストライク先行で攻めた。5球以上要した打者は32人中4人。第1Sを2連勝で突破し、勢いにのる巨人を寄せ付けなかった。

 プロデビュー戦から、ちょうど1年の節目でもあった。奥川は昨年、同じマウンドで広島に三回途中5失点。当時は最下位チームの最終戦。重圧も、試合の持つ意味合いも全く違う一戦で、「悔しい思いをした借りを返せたと思います」。

 高津臣吾監督は、今季チームトップタイの9勝を挙げた右腕だから、この初戦を任せたわけではない。もっと大きく育ってほしいとの願いを託して、送り出した。「勝っても負けても彼の試合だと思っていたけど、これだけの投球はさすがに想像していなかった」

 後々まで語り継がれそうな一夜となった。(藤田絢子)