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投票に行くのは無謀?揺れる母 重度知的障害の娘が一票を投じるまで

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大坪実佳子
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 愛知県瀬戸市の池戸智美さんは、悩んでいた。2016年7月にあった参院選の時のこと。当時19歳の長女美優(みゆ)さんに、人生初の投票所への入場券が届いたのだ。

 美優さんには、先天性の重度の知的障害がある。字は書けず、声を出して話すことや指でさすことも難しい。政党の違いや選挙公約は「多分、理解できていないと思う」。身長は124センチと小柄で、前年までは投票所に行くと子どもに間違えられて風船をもらうほど、幼く見られた。

 娘を、投票に連れて行ってもいいのだろうか――。

二つの夢

 1996年、美優さんは1950グラムの低体重で生まれた翌日、片肺が破れて自力で呼吸ができなくなった。21番染色体の片方の上下が欠損し、くっついて丸くなっている「環状21番染色体」という、世界的にも報告例が少ない疾患があることがわかった。

 医師からは「大きくなることは難しいかもしれない」と告げられた。幼い頃は体が弱く、発熱やけいれんで入退院を繰り返した。

 娘が成長して成人式に出ること、投票に行くこと。

 いつしか、この二つが智美さんの夢になった。だから、2016年に初めて届いた選挙の入場券は、社会の一員として認められた証しのようでうれしかった。

 だが、思いは揺れた。

意思確認が難しい娘を、投票に連れて行くことに意味はあるのか。どのように候補者を選ばせるのか。判断や対応も自治体によってまちまちな中、親子で必死に投じた「一票」の物語。

 同じように障害がある子を育…

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