何げなく見ていた雑誌のお知らせに目がとまった。
「65歳以上の希望者1人の『おもいで写眞(しゃしん)』をプロカメラマンが撮影します」
映画「おもいで写眞」にちなんだ企画、と書いてある。
久々に地元に戻ってきた主人公が、お年寄りの遺影写真を撮る仕事を引き受ける。初めは皆「縁起でもない」と嫌がったが、「思い出の場所で写真を撮る」という企画に変えると、たちまち人気を呼ぶ――。そんなストーリーの映画だ。
企画は単なる遺影撮影ではなく「素敵な思い出のある場所で写真を撮ります」という。
名古屋市の青井郁佳(かよ)さん(54)は、コロナ禍で生きがいを失い落ち込んでいる父・秀實(ひでみ)さんの「傘寿(80歳)になる思い出になれば」と考えた。
「父親らしい写真を残してあげたい」
母の遺影に「置いてかれちゃった」
郁佳さんは「遺影」に苦い思い出があった。
実家の仏壇にある母の遺影だ…