北方領土の「語り部」活動、コロナ禍で打撃 修学旅行が激減

有料会員記事

松尾一郎、大野正美
[PR]

 新型コロナウイルスの影響で、北方領土について学ぶ修学旅行や研修が減っている。「語り部」の元島民の高齢化が進む中、貴重な証言を次世代に伝える機会が失われかねない状況だ。緊急事態宣言がようやく解除され、関係者はこの2年間の空白を埋めようと力を注ぐ。

 今月5日、北海道標津町の語り部の福沢英雄さん(81)は、道が主催する北方領土体験学習の一環で、標津中学校3年の23人に地元の生涯学習センターで終戦後の1945年9月の出来事を語った。

 「ある日、怪しい黒い船がどんどん来た。ソ連兵は学校や神社、お寺をねぐらにし、いきなり家に土足で上がってきた。キラキラ輝くものを欲しがる。腕時計とかを鉄砲を突きつけて持っていく。するとまた新しい兵隊が来る。やるものがなく、何も出せないでいると、いじわるをしていると思って鉄砲を撃ち出した」

 そして、故郷の歯舞群島の多楽島から船で標津に逃れた。「食べ物も住むところもない。山で木を切ってきて三角小屋を建てた。ふろ、トイレもなく、学校で『臭い』と馬鹿にされたから、棒でぶったたいてやった。校長から『乱暴はいけませんよ』と注意され、『何も悪いことしていないのに』と訴えたら、いじめはなくなった」。生徒は話に引き込まれ、聴き入っていた。「島を返せ」のたすき姿で生徒と記念写真を撮った。

 北方領土に近接する北海道東部の根室市などでは、福沢さんのような元島民の語り部の証言を聞く修学旅行や研修が日常的に行われてきた。しかし昨年からのコロナ禍で人の移動や接触を伴う催しが制限され、激減している。

 独立行政法人・北方領土問題対策協会(北対協)や根室市によると、「北方領土を目で見る運動」として実施されている修学旅行では、2018年度は中高大10校、19年度は中高21校を受け入れた。しかし、20年度は中高5校、21年度はこれまでで中高5校にとどまる。

 北対協によると、北方領土返…

この記事は有料会員記事です。残り1589文字有料会員になると続きをお読みいただけます。