清く正しくない宝塚とは 宙組・芹香斗亜のはじけるコメディーセンス

宝塚歌劇団

田部愛
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 不倫、裏ルートで出世、自殺未遂と、昼ドラのような展開が続く。それなのに、見終った後のこのピュアな気持ちはなんだろう。11月13日に大阪・梅田の梅田芸術劇場シアタードラマシティで開幕した宝塚歌劇団宙組の「プロミセス、プロミセス」で、芹香斗亜(せりかとあ)が人間味あふれる主人公をチャーミングに演じている。 アカデミー作品賞などを受賞した、ビリー・ワイルダーの名作映画「アパートの鍵貸します」が原作だ。そこからニール・サイモンが脚色したブロードウェーミュージカルをもとに、歌劇団の演出家・原田諒が宝塚バージョンとして練り上げた。

 物語の舞台は1960年代のニューヨーク。お人よしの保険会社員チャック(芹香)は、愛人とのあいびきの場所をさがす会社の重役たちから頼まれ、アパートの部屋を貸し出している。重役から重宝がられて出世し、ご機嫌なチャックだったが、部屋を貸した人事部長シェルドレイク(和希そら)の不倫相手が、思いをよせる食堂係のフラン(天彩峰里(あまいろみねり))だと知ってしまう。

そこは「清く正しく美しく」とかけ離れた世界

 「清く 正しく 美しく」とはかけ離れた世界だが、舞台上はあくまでもスタイリッシュ。モノクロでストライプ柄のシンプルな舞台装置に、マカロンのようにカラフルな衣装や小道具が映える。

 ライトブルーやタータンチェックなど派手なスーツを着こなす芹香も一見おしゃれなモデル風だが、上司を前にしてくるくる変わる情けない表情に目が離せない。へっぴり腰にハの字の眉、うわずった声と、コメディーセンスを爆発させている。

 まくし立てるような膨大なセリフも聞き取りやすいため、物語に違和感なく入り込める。

 道ならぬ恋に葛藤する女性、フランを演じる天彩の表現力も際立つ。不倫を続けつつ、むなしさを感じるシェルドレイク役の和希の醸し出す色気や、フランの兄役に加え、休演者の代役も演じる留依蒔世(るいまきせ)の巧みさも見逃せない。

 人間の欲も弱さもリアルに感じられるからこそ、作品のメッセージが素直に心に入る。原田はパンフレットに「単なるコメディー作品として終わらせるつもりはない」と記している。その通りに仕上がった。

 11月18日まで。30日~12月7日、東京・池袋の東京建物BrilliaHALL。(田部愛)