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日大・田中理事長側に「お礼で7千万円」元理事供述 帯封も見つかる

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 日本大学板橋病院をめぐる背任事件で逮捕された日大元理事の井ノ口忠男容疑者(64)が東京地検特捜部の調べに対し、医療法人「錦秀会(きんしゅうかい)」(大阪市)前理事長の籔本雅巳容疑者(61)と相談し、逮捕容疑となった取引の「お礼」の趣旨で、日大の田中英寿理事長(74)や田中氏の妻に総額7千万円を渡したと供述したことが分かった。田中氏は受領を否定しているとされるが、このうち1千万円についてはお札を束ねた銀行の帯封が田中氏の自宅から見つかったという。

 特捜部は田中氏側近の井ノ口容疑者らが日大に計約4億2千万円の損害を与えたとみており、その一部が事実上トップに還流した疑いがある。一方、井ノ口容疑者は、資金作りの仕組みや提供した現金の趣旨は田中氏に報告していないと供述。特捜部は田中氏の関与を慎重に調べている。

 複数の関係者によると、井ノ口容疑者は籔本容疑者と相談し、①2020年2月6日、都内のホテルで1千万円②同8月7日、都内の焼き肉店で3千万円③21年6月3日、日大理事長室で1千万円④同日、田中氏の妻が経営するちゃんこ屋で2千万円――を田中氏や妻に渡したと供述したという。

ホテルで1千万円、焼き肉店で3千万円…

 今回の事件で両容疑者はまず、日大板橋病院の建て替え工事の設計・監理業者に選ばれた都内の設計事務所から、籔本容疑者側に2億2千万円を不正送金したとして逮捕、起訴された。

 供述などによると、①は選定審査に参加した同事務所に他社情報を提供するなどの便宜を図った時期で、選定を確実視した井ノ口容疑者が同事務所に準備を指示。1千万円は取引に関わった別の業者が立て替えることになり、井ノ口容疑者が田中氏もいたホテルにある着替え室で田中氏の妻に渡したという。

 ②は日大と正式契約した同事務所から籔本容疑者の実体のないペーパー会社に2億2千万円の日大の資金が送金された2日後だった。田中夫妻らが出席した食事会で、3千万円と酒が入った紙袋を籔本容疑者が渡したという。

 井ノ口容疑者は田中氏側への①②の計4千万円は設計業者選定をめぐる「籔本さんからのお礼」で、②については「設計事務所から受け取ったリベートの一部」と供述したという。

 両容疑者はさらに、同病院に医療機器と電子カルテ関連機器を納入する取引でも籔本容疑者側の2社を不必要に介在させ、2社の利益として計約2億円を上乗せしたリース契約を今年3月と5月に日大に結ばせて損害を与えたとして再逮捕された。井ノ口容疑者は翌6月に田中氏側に渡した③④の計3千万円はこの取引に対する「籔本さんからのお礼」と供述したという。

 供述などによると、③の理事長室にいたのは両容疑者と田中氏だけ。1千万円が入った紙袋を差し出した際の会話は「(田中)先生、これ」「おう」という程度で、現金の趣旨は説明していないという。

 一方、井ノ口容疑者は逮捕容疑について、大学に損害を与えたという違法性は否定しているという。

田中英寿理事長は現金受領を否定

 特捜部は今年9~10月に2回、田中氏の自宅を捜索した。この際、①の1千万円を用意した業者が出金した大阪市内の銀行支店の帯封が見つかったという。

 田中氏への現金提供疑惑はこれまで、計6千万円は籔本容疑者の供述で判明していた。一方の田中氏は特捜部の任意聴取に現金受領や事件への関与を否定。朝日新聞は日大広報課を通じて田中氏に現金の趣旨などを改めて質問したが、「捜査中なので回答を控える」との返答だった。