古着を切って二重に…生理用品を毎月手作り、娘は恥ずかしいと泣いた

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伊藤喜之=ベイルート、半田尚子、編集委員・北郷美由紀
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 経血をともなう生理にはナプキンなどの生理用品が不可欠だ。ただ、入手に苦労する女性たちはいまも世界各地にいる。

女性の半分、生理用品入手できず

 チョキ、チョキ、チョキ。古着をはさみで切っていく。切った布地は折りたたんで二重に重ねる。1分ほどで完成した、手作りの「即席ナプキン」だ。

 「時間はかけられない。毎月、女4人分で60枚以上作らなきゃいけない」

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古着を裁断して、娘たちの代用ナプキンをつくるザイナブさん=2021年9月23日、ベイルート、伊藤喜之撮影

 レバノンの首都ベイルートの衣料品店に勤めるザイナブさん(38)が言った。夫と離婚し、12~15歳の3人の娘をひとりで育てる。毎月こうして、自分と3人の娘分のナプキンを作る。

 12歳の三女マリアンさんは昨夏、初潮を迎えた。当時はコロナ禍で学校は週1回だったが、その1日さえ登校を拒んだ。「こんな布切れで、友達の前で血が染み出したらどうするの。恥ずかしい」。泣きじゃくった。結局、1週間の生理中、一歩も出なかった。

 いまレバノンでは、深刻な経済危機で女性の5割以上が適切な生理用品を手に入れられない状態にあるといわれる。子ども用おむつや新聞紙、トイレットペーパーなどで代用する女性もいるという。

国際NGO「プラン・インターナショナル」によると、毎日、生理中の女性は世界中に約8億人いて、うち約5億人が衛生的な環境で生理を迎えられないでいるといいます。人間としての尊厳を脅かされかねない女性特有の負担を、社会全体で解消していくことは、ジェンダー平等に近づく道でもあります。記事の後半ではインドネシアや日本の状況を紹介します。

 かつて第2次世界大戦後に中東の金融センターとして栄えた時期もあるレバノンでは、2年前に当時の内閣が退陣して以降、経済状況が悪化の一途をたどり、昨年3月には国の借金が返済できない債務不履行に陥った。通貨安で輸入品中心に物価が高騰。コロナ禍で主力産業の観光業が冷え込み、国民の過半数が1日に最低限必要なものが買えない貧困線以下の暮らしを強いられているという。

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ベイルートのスーパーで販売されているナプキン。高いものは1パック4万730レバノンポンド(米ドルの公定レート換算で27ドル)だった=2021年9月22日、伊藤喜之撮影

 ザイナブさんの家では以前なら既製品の使い捨てナプキンを購入できていた。しかし今や高いと4万ポンド。米ドルとの公定レート換算で最大27ドル(約3千円)にもなる。月給は増えず、毎月4人分のナプキンを買えば給料の1~2割が消える。

 「通学のバス代や、授業で使う文房具も必要。そっちを優先するなら、ナプキンはあきらめるしかない」

 貧困家庭で育ったザイナブさん。子どものころ、生理が始まると、母親から同じような布地の代用ナプキンを手渡された。「自分の子にはみじめな思いをさせたくなかったのに」。そう言ってうなだれた。

■必需品リストから除外、怒る…

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    長島美紀
    (SDGsジャパン 理事)
    2021年11月15日12時48分 投稿

    【視点】コロナウィルスによる世界的なパンデミックは、日本も含め世界各地で存在したものの、可視化されていなかった「生理の貧困」を顕在化させました。日本でも今年「#みんなの生理」が実施したアンケートでは「経済的要因で生理用品を買うのに困ったことがある人

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    磯野真穂
    (人類学者=文化人類学・医療人類学)
    2021年11月15日11時32分 投稿

    【視点】>一方、宗教や慣習などに基づいて生理をタブー視する価値観は根強く残る。 確かに、生理がタブー視される傾向があるのは事実ですが、タブーになる物質は、その裏側になんらかの力が見出されていることがほとんどです。血という普段は体の中に流れてい

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