不妊や流産に受精卵の検査はどこまで効果? 学会は認めるが課題多数

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神宮司実玲
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 体外受精でできた受精卵(胚(はい))の染色体を調べ、不妊治療の成功につなげる「着床前検査」。日本産科婦人科学会(日産婦)は10月、条件付きで実施を認める方針を示した。「流産を回避する効果が期待できる」とするが、病気や障害がある人の排除につながりかねないとの指摘もある。

学会の見解改訂へ

 受精卵染色体の数の変化は、流産や、受精卵が子宮に着床しない一因とされる。そのため、検査で数に過不足のない受精卵を選んで子宮に戻せば、妊娠率や出産率が上がるのではないか、と期待されている。

 だが、病気や障害がある人を受精卵の段階で排除することになりかねないとの懸念もある。日産婦は学会の見解で、重い遺伝病がある場合などを除いて検査を禁じてきた。

 欧米では実施されているが、有効性ははっきりしていない。このため、日産婦は2020年から、効果を調べる臨床研究を始めた。対象は、①流産を2回以上経験②体外受精で2回以上妊娠できなかった③夫婦いずれかに染色体の形の異常がある――のいずれかに該当する場合だ。

 日産婦の中間報告によると、参加した4348人のうち、受精卵を子宮に戻せた人の妊娠率は66・2%、流産率は9・9%。19年の日産婦集計の一般的な体外受精のデータ(妊娠率は33%、流産率25%)よりも良い結果だった。ただ、63・4%の人は子宮に戻せる受精卵を得られなかった。

 このため、日産婦は、検査した人全体でみると、「最終的に子どもを得られる可能性が高くなるかはわからない」としている。

 日産婦は10月の公開シンポジウムで、「流産を減らす効果が期待できる」として、学会の見解を改訂し、検査の実施を認める方針を示した。

 日産婦は今月10日には、学会のホームページで、臨床研究と同じ①~③のいずれかに該当する場合を対象とする見解案を公表した。③は学会の見解で現在も認められている。24日までホームページで広く意見を募集し、年明けに見解を改訂する。

 体外受精ではこれまで、複数の受精卵が得られた場合、細胞の大きさなどから子宮に戻すのに適した受精卵を見た目で選んでいた。

 日産婦は着床前検査を、「(受精卵の)選択に客観性をもたせる検査」とする。

 一方、検査には課題もある。受精卵の細胞の一部をとることで生じるダメージの影響はわかっていない。

 検査の結果、染色体の数や形に変化のある細胞と変化のない細胞が混ざっているなど、受精卵を子宮に戻すか難しい選択を迫られる場合もある。

 検査を希望する人に対し、検査についての正しい情報提供や相談体制のしくみも重要になる。

 日産婦は、検査を始める前や、受精卵を子宮に戻す前に、遺伝カウンセリングを行うなど、一定の基準を満たした施設を認定したうえで、その施設に対し、検査を認める方針だ。

 高額な費用負担の課題も残る。1回約50万円の体外受精の費用に加え、受精卵1個あたり5万~10万円の検査費用がかかる。来年度から体外受精などの不妊治療公的医療保険が適用される方向だが、着床前検査が適用の対象となるかは、現時点では決まっていない。

■検査の倫理的課題も議論…

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