地域活性化の起爆剤に 大阪・和泉市春木町のだんじり86年ぶり新調

井石栄司
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 大阪府和泉市春木町で10月、地域のだんじりが86年ぶりに新調された。コロナ禍で祭りは2年続けて中止となったが、「新しいだんじりが地域活性化の起爆剤になれば」と住民たちは期待している。

 春木町のだんじりは1935年から使われてきたが、老朽化が進んでいた。新調にかかる費用は約1億7千万円。「祭りにそんなにお金をかけなくても」という声もあったが、町会では「だんじりは地域の絆の要」として、2016年3月に新調する方針を決めた。約50人からなる新調委員会を発足させた。費用全額を地元の企業や住民からの寄付でまかなった。

 制作は岸和田市の藤本工務店に発注した。高さ約3・8メートル、横幅約2・5メートル、長さ約4・2メートル、重さ約4トンで初代より一回り大きい。彫り物は、初代だんじりを彫った彫刻師・木下舜次郎氏の孫に依頼。弘法大師が、この地にあったお堂で冬越しをしてから高野山に向かったという伝承などをだんじりの装飾部分に彫り込んでもらった。

 だんじりの制作を進める一方、春木町会の中辻弘治会長(68)や新調委の阪東知樹委員長(55)らはこんな思いを持ったという。

 「新調に後ろ向きだった人にも『この町に住んで良かった』と言ってもらえるようにしたい」

 春木町はかつて織物業が盛んだったが衰退。一時は高齢化と人口減少が進んでいた。そんな中、新調委はこの5年、「町民の誰もが誇れる」「町の活性化につなげる」など五つのスローガンを掲げ、地域の絆を強める活動を続けてきた。

 神社で倒木被害などが出た18年の台風21号では、炊き出しをしたり、強風による飛来物などのごみを収集したりした。19年には認知症の高齢者を支えるサポーター制度を町内で発足させた。

 だんじりは今年完成したが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、5月に予定していたお披露目は延期に。祭りも昨年に続き今年も中止となったが、感染拡大も落ち着いたことから10月17日にお披露目をした。

 この日は、早朝から老いも若きも300人近い住民が参加。マスクを着用するなど感染症対策に注意しながら岸和田の工務店から地域の社まで約7キロの道のりをひいた。

 阪東委員長は「5年間の活動や取り組みが、単なる新しいだんじりの制作だけでなく、地域の絆を芽吹かすための土壌づくりにもつながった」と話す。

 近くに大型量販店「コストコ」などの商業施設が立ち並び、利便性が高いことなどから、ここ数年は転入者が増加傾向にある。中辻会長は「新調を機に新住民にも祭りに参加してもらい、だんじりが絆を強める起爆剤になれば」と話している。(井石栄司)