ラブホを掃除してわかったこと 絵本「人のセックスでご飯を食べる」
人前に出るのが怖い、華やかに見える周りと自分を比べてへこむ。変わるきっかけは、ラブホテルの清掃の仕事だった。
柿沼茄奈さん(24)が初めてラブホテルに入ったのは、19歳だった。セックスのためじゃない。働きに来た。コンチキショウ、ここしかない、と自分で決めた。
東京・池袋。駅のすぐそばに、夜の街が広がる。不夜城の掃除は、日暮れとともに始まる。外でたばこを一服、さあ体力勝負だ。時給約千円、1室15分、20室を回る。体臭、体毛、経血は当たり前、なぜか納豆や金粉まみれのアブノーマルな部屋も。「戦闘員みたいな気持ちで」入り、拭き掃除は両手両足で。夜0時、仕事終わりの帰り道、ふらつきながら自転車のペダルをこいだ。
透明人間な日々
日の目を見ない仕事をしたのは、人と関わりたくなかったから。子どものころからいじめられ「自信をつけるタイミングがなくて」。華やかな人や声が大きい人を見ては萎縮し、居酒屋の接客は緊張で手に汗をかくばかり。実家を出るために引っ越し代を稼ぎたかったが、たまるのは疲労、減る自尊心。人の靴しか見えないほどうつむき、道の端を歩く癖がついた。自分にも他人にも怒り、ぐずついた雨みたいな毎日、ラブホは傘のように好都合だった。人前に出ず、客とすれ違いそうになれば死角に隠れるのが作法。透明人間かしら。
人と関わることを避けていた自分に訪れた変化とは。記事後半では、客室からの思わぬ学びを語ります。
計算外だったのは、人目を避…