第24回共同体問い直した住宅危機 運動続ける米民主主義、カギ握るインフラ

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米イリノイ州ケアロ=青山直篤
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劣悪な環境が問題化した公営住宅は撤去され、いまは更地になっている。貧しい黒人家庭が多く入居しており、撤去は人口減に拍車をかけた=10月5日、米イリノイ州ケアロ、青山直篤撮影
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断層探訪 米国の足元 第5部④

 更地が目立つ米イリノイ州ケアロの中心部にひときわ広い一角がある。そこにぽつりと立つ廃屋の壁には、黒人解放運動の指導者マーチン・ルーサー・キングやマルコムXの色あせた絵が描かれ、「夢は続く(THE DREAM LIVES ON)」と記されていた。キングの有名な演説「私には夢がある」の「夢」だろう。

 この一角と、少し離れた街区には2019年まで、計約200世帯が住む米連邦政府管轄の公営住宅が並んでいた。1940年代に建てられ、老朽化が著しい低層アパートに住んでいたのは大半が貧しい黒人だった。衛生上などの理由から米住宅都市開発省(HUD)が撤去を決め、住人は家賃補助を受けて移住を余儀なくされた。これが、ケアロを含むアレクサンダー郡が、2010~20年に36・4%という全米一の人口減を引き起こす大きな要因となった。

 公営住宅ではネズミやゴキブリがまんえんし、暖房も利かない劣悪な環境が長く放置されてきた。一方で、管理に責任を持つアレクサンダー郡住宅局の幹部らは公金を旅行などに不正利用していた。その実態を調査報道で掘り起こしたのが、地元紙「サザン・イリノイアン」の記者、モーリー・パーカー(39)だ。

連載「断層探訪 米国の足元」

冷戦終結後、世界はグローバル化をひた走り、企業はサプライチェーンの効率化を前提として経済成長を追求してきた。膨大な富が生まれる一方、格差の拡大や地域社会の弱体化は、民主主義を弱めた。新型コロナウイルスがもたらした危機は、時代の転機を告げている。ただ、一国に閉じこもる保護主義も答えにはならない。激動する市場と、統制色を強める国家とが織りなす「コロナ後」の世界。動揺するサプライチェーンの「断層」で針路を探る人々を訪ね、各5回構成で報告する。

 イリノイ州カーボンデールを…

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連載断層探訪 米国の足元(全30回)

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