浮かび上がるアイヌの暮らし 道博物館で企画展 

芳垣文子
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 先住民族のアイヌの人々が使った衣類や道具を紹介する「アイヌのくらし――時代・地域・さまざまな姿」展が、北海道博物館(札幌市厚別区)で開かれている。12月12日まで。

 道内各地、さらには樺太や千島に住んだアイヌ民族が生活で使った品やさまざまな資料約350点を通して、江戸後期から昭和までを中心に暮らしぶりやその背後にある歴史を浮かび上がらせる展示だ。

 企画した同館学芸主査の大坂拓さんによると、1970~80年代は、アイヌ民具を手っ取り早く集めるため古物商経由での収集が主流となり、出どころが不詳で「歴史的文脈」から切り離された資料が多かった。今回の展示では可能な限り、どんな人がいつごろ使っていたかがわかる品を集めた。

 イラクサの繊維で織られた伝統的衣装のそばには、35(昭和10)年に樺太で撮られた写真が添えられている。シャツの上にその衣装をまとった男性と少女らが写っており、その男性は短髪でひげをそり、げた履き。少女は洋服を着ている。長いひげを生やした長老のようなアイヌ民族のイメージとはかけ離れた姿だ。

 道具を使っていた人の名前や写真、遺族のメッセージなども添えられ、どんな人生を歩んだかがわかる展示もある。

 また、明治初期に日本海側の一部地域の支配を担った米沢藩士の日誌には、ニシン漁が盛んになって和人が流入し、ごく少数になったアイヌの暮らしぶりが絵を交えて記されている。和風の名前を名乗らされたことがわかる戸籍や、アイヌに対する立ち退き命令など土地制度にかかわる文書もある。

 千島・色丹島のアイヌが着ていたワンピースは、大坂さんのイチ押しだ。ロシアとの接触の中で培われた伝統がうかがえるという。持ち主と思われる女性の写真が添えられており、当時の様子が生き生きとよみがえる。

 実際に使われた品と写真や証言を組み合わせた展示方法について、大坂さんは「当時収集した和人研究者の立場からではなく、研究者の求めに応じて民具などを提供したアイヌ民族を主語にした視点で考えた」と話す。

 観覧無料。午前9時半~午後4時半(入場は午後4時まで)。月曜休館。問い合わせは同館(011・898・0466)。(芳垣文子)