大谷翔平の指導者が捨てた「常識」 才能をだめにしないロジックは

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聞き手・高久潤
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 日本では「ずば抜けた人材」が育ちにくい――。こんな従来のイメージを覆す活躍を見せる若者が、スポーツや文化芸術の世界で増えている。日本人で20年ぶりの最優秀選手(MVP)の期待がかかるメジャーリーガーの大谷翔平選手や、菊池雄星選手らが輩出した花巻東高校野球部の佐々木洋監督に、「異才」の育て方を聞いた。

指導や練習方法が原因 開花させられない才能

 ――メジャーリーガーとして活躍する選手は高校生の頃から他の選手とはまったく違うのですか。

 「大谷を最初に見た時はびっくりしました。すごい速い球が投げられるわけじゃないんですけど、リーチが長くてとてもしなやかだった。これは高校3年間でどうなっちゃうんだろうと思いました。ただ、すぐにメジャーリーガーになる姿を思い描けたわけではありません。もっと言えば、日本のプロ野球でドラフト1位になるとも思いませんでしたね」

 「一方で菊池を見たときは怖いと思いました。これは誰が指導してもドラフト1位になるな、と。ひょろひょろしていて筋肉もそんなにないのに、関節の可動域が広いから、体格にしては速いボールが投げられる」

 ――選手の才能をみるときのポイントはどこですか。

 「身体能力は重要です。子どもに親の骨格は遺伝するので、親も観察します。さらに重視するのは、親が子どもにどんな言葉をかけているか、他の親とどんなふうに接しているか。親の育て方や考え方で子どものマインドは変わり、伸びしろに差が出ると感じています。例えば、小中学生ですごく活躍している選手であっても、その時のパフォーマンスだけを参考に判断することはありません」

 ――才能は、監督の指導次第で開花するということですね。

 「指導者で才能が開花するというのはうそだと思います。大谷や菊池を私が育てたとは恐ろしくて言えません。どこで育っても、あのレベルになったのではないでしょうか。私は自分なりの経験と勉強で選手の才能を開花できるように、と考えていますが、育て方に正解はないと思っています。毎年、大谷や菊池みたいな選手が出ているなら『育てた』と言えるかもしれませんが、そうじゃない。そもそも『育てた』かどうかは育てられた側の選手が決めることです」

 「この2人や佐々木朗希(現・千葉ロッテマリーンズ)ら東北出身の選手が活躍しているから、なぜ最近東北からすごい選手が出るようになったのか、とメジャーリーグや日本の球団関係者から尋ねられます。私は以前もすごい才能の選手はいたと答えます。指導や練習方法が原因で開花させられなかったと考えているからです」

 ――手厳しいですね。

 「指導によってすごい選手を生み出すことは難しいが、だめにしてしまうのはたやすいと思う。野球の世界は伝統と経験がものをいいます。これまでは子どもの才能も、指導する側が『あの人がこうやった』『こう言った』などの理由で判断してきました。でも、大谷や菊池のような逸材であれば、才能があることは指導者であれば誰でもわかります。才能というものを細かく考えていくと、そんなに簡単な話ではないのではないか、と思います」

指導者が選手の才能を「だめにしてしまうのはたやすい」と話す佐々木監督。記事後半では、「常識外れ」と言われた二刀流・大谷選手を生み出したロジックに迫ります。

 ――どういうことでしょうか。

 「私は国士舘大学で大学野球…

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