88歳、草笛光子さんが語るこれから 「まだいい仕事をしていない」

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聞き手・林るみ 写真・井手さゆり
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 88歳にして第一線で活動を続け、世代を超えて支持されている俳優の草笛光子さん。美しいグレーヘア、ハイヒール姿が似合い、公開中の映画「老後の資金がありません!」にも出ずっぱりです。一方、年齢を隠さず、波乱の人生、ありのままの姿もさらけ出しています。なぜ年をとるにつれ輝きが増すのか、話を聞きました。

「前歯が抜けた顔を見せちゃった」

 ――最新作のコメディー映画「老後の資金がありません!」では、前田哲監督から役作りをしないよう言われたそうですね。

 監督には「演じないでください。あなたはそのまんまで、おかしいですから」と言われました。ショックでしたね。かわいいとか、面白いとか言っていただければまだしも、おかしいと言われるのは。私、そんなにおかしい? 「演じるな」と言われたのも初めて。でも、そんなにずばり言う人は悪い人ではないかも、と思った(笑)。そこまでおっしゃるなら、ま、監督に料理してもらいましょう、と。

 ――劇中では、前歯の差し歯が抜けた顔を見せたり、歌うシーンでは「補聴器を外して歌った」と語ったり、老いを隠していません。

 前歯は撮影中に偶然にとれちゃったんです。そばにいた主演の天海祐希さんに「あら、落っこっちゃった。すみません」と言って一緒に探してもらって。歯を付けるノリを買いに行こうとしたら、そのまま、監督が撮らせてというから、最初は「絶対いやだ」と言っていたんだけど、監督が「どうしても撮りたい」とうれしそうに言うものだから。やっぱり役者って扮することが嫌いじゃないのね。歯を抜けた役って一度もやっていませんから。

 最近耳が遠くなり、補聴器をつけてから歌うことを避けていたんですが、はずして、「ラストダンスは私に」を歌いました。長い間ミュージカルをやってきたから、今さら恥をかきたくないというのはあった。ましてや長い間付き合ったコーちゃん(越路吹雪さん)の歌でしょ。でも、開き直った結果、今までにない自分が出せたと思っています。

 若くきれいでありたいと思ったことはないんです。美しくきれいな女優さんなら他に大勢いる。人に感動を与える役者でいたいだけ。自分とは別の人間を演じるには動ける体でいたいと思っているだけなのね。まず健康であり、あとは体力とやる気ですね。

 ――06年の舞台「6週間のダンスレッスン」の初演から本格的な体のトレーニングを続けておられます。

 体は鍛えています。20年ほど前から、専門のトレーナーに週1回2時間ほど、家に来てもらっています。厳しいわよ。毎日ストレッチもしなきゃいけないんだけど、しないから怒られています。あと、毎朝、ベッドの中で手と指を動かして血流をよくして体を温めます。

 自分なりの健康法として、朝は必ずお煎茶に梅干しを入れていただきます。お風呂の中では舌を動かして、のどと肺を鍛えています。

 不摂生だけど、昔から夜更かしです。新聞を読むのが好きで、新聞を広げながら夜中にあれこれ、ひとりで考えごとをするのが楽しい時間です。

 ――子どもの頃は虚弱体質で人見知りだったとか。

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