第88回【新聞と戦争・アーカイブ】表現者たち:5

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【2007年10月19日夕刊3面】

 「是非ゆきたい、自費でもゆきたい(中略)もう今はくだらん恋愛なんか書いてゐる時代ぢやないと思ひます」

 作家林芙美子は1938年8月、ペン部隊の中国戦線従軍作家に選ばれると、朝日新聞紙上でこう意気込みを語った。「放浪記」で人気作家になった芙美子は、前年末、毎日の従軍記者として南京へ入っている。毎日は今度の漢口戦では、海軍に従軍する吉屋信子と契約し、林は朝日へ原稿を送ることになった。毎日・吉屋組対朝日・林組の競争の観を呈した。

 9月11日に東京をたった林は、漢口攻略戦の拠点・九江、さらに先の広済に入った。ここからは地雷が埋まり、戦闘がある最前線だ。

 朝日の従軍記者・渡辺正男は林にたずねる。

 「漢口へわたしたちといっし…

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