第91回【新聞と戦争・アーカイブ】表現者たち:8
【2007年10月24日夕刊3面】
1940(昭和15)年末、日本の音楽界はひときわ華やかだった。
中国との戦争が泥沼化し、オリンピックや万国博覧会も返上・延期されて孤立感を深める中、国内に向けた祝賀行事として紀元2600年を祝う大がかりな音楽会が相次いだ。
11月26日、東京・日比谷公会堂で「皇紀二千六百年奉祝芸能祭」の演奏会が開かれ、「海道東征」が初演された。神武天皇の東征伝説をもとにした北原白秋の詩に、信時(のぶとき)潔が作曲した大曲だった。元寇(げんこう)をイメージした山田耕筰の管弦楽曲「神風」も初演された。
28日には東宝劇場で山田の新作オペラ「夜明け」が開幕した。幕末の唐人お吉の物語を、3幕5場に仕立てた日本で最初の本格的なオペラだ。
12月7日、海外作曲家に委…