「選挙協力しか打開策なし」では野党に何が不足? 政治学者の視点

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聞き手・大内悟史
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 4年ぶりの衆院選は野党第1党の立憲民主党共産党が議席を減らし、日本維新の会国民民主党が議席を増やす結果となった。自公連立岸田文雄政権は発足1カ月で一定の信任を得た形だ。野党間の選挙協力を進めた立憲民主党の枝野幸男代表が辞意を表明するなど、今後の野党のあり方が論議を呼んでいる。二大政党制の一角を担う「政権交代可能な野党第1党」はどうすれば実現可能なのか。比較政治学・政治過程論を専門とする政治学者の野中尚人・学習院大学教授に聞いた。

 ――現在の選挙制度は政権交代を想定していると思いますが、民主党政権が下野した2012年以降、10年近く政権交代の実現が難しい状態が続いています。

 小選挙区制比例代表制を組み合わせた現行制度で初の衆院選が実施されたのは今から四半世紀前の1996年のことです。当時の自民党は戦後長く続いた中選挙区制のもとで「政治とカネ」の問題を抱え、多額の資金集めが可能な一部の政治家が派閥を率いていました。ひと握りのボスたちが官民ともに隅々までがんじがらめの利権構造を牛耳っており、密室で談合して政治をほしいままにする。そんな戦後政治の悪弊から何とかして抜け出さなければならないというのが当時の問題意識でした。

 ――今の選挙制度が民意をゆがめている、落選した候補者が比例復活するのは分かりにくい、といった批判の声も根強くあります。

 小選挙区制を中心にした今の選挙制度は様々な問題点が指摘されていますが、潜在的、論理的な帰結としては政権交代のための制度だと言えます。従来の中選挙区制よりも政権交代をしやすくして政治家や政党間の競争を活性化し、政治全体の質を高める狙いがありました。比例代表制を一部に組み込んだことで野党や小政党の政治家も生き残ることができ、新しい政党が議席を得るハードルも下がっています。政治活動の自由と民主主義のバランスを考えた制度です。

 ――選挙制度が想定する二大政党制が確立しないのはなぜでしょうか。

 まずは選挙の日程を決める与党側の動きの影響が大きいと思います。12年の衆院選で自民党と公明党が政権を握ったあと、14年、17年、21年と過去3回あった衆院選はいずれも有権者に十分考える時間を与えずに政権選択を求める短期決戦でした。日本国憲法7条による首相の衆議院解散権は、ときの首相の都合で乱用される傾向が続いています。菅義偉前首相は選挙による信任・審判を受けずに退任し、岸田政権は発足1カ月足らずで有権者に政権選択を強いました。

 ――とはいえ、選挙が示す民意は民意として尊重しなければなりません。自公両党は衆院で300議席前後の圧倒的多数を占め続けています。今回の選挙でも政権交代への期待は高まらず、与党に比肩しうる野党は見当たらない状態です。

 それでも、日本政治の質向上…

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