東大の総長選考、昨年の混乱受け制度見直しへ 総長経験者は排除

編集委員・増谷文生
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 東京大学は、昨年の総長(学長)選考の過程が学内外から批判されたことを受け、選考のあり方を見直す方針を決めた。総長選考会議の改善策を検討してきた、藤井輝夫総長を座長とするワーキンググループ(WG)が、総長経験者を選考会議に関与させないことなどを提案する最終報告をまとめた。東大は今後、提案を実現させるため学内規定などを改正する。

 昨年秋の総長選考では、教職員による意向投票に先立つ予備選で得票1位だった候補者が、意向投票の対象から外されたことが問題となった。特に、選考会議の議長だった小宮山宏・元総長が非公開の会議で、1位候補をめぐる匿名の告発文に言及した点について、「意向投票の対象から外す方向に議論を誘導した」との批判が出ていた。

 これを受けて当時の五神真総長が設置した第三者委員会は昨年12月、小宮山氏の言及について「妥当性を欠くと言わざるを得ない」と認めた。一方で、議論に大きな影響は与えなかったとして、選考は正しく行われたと結論付けた。

 その後、4月に就任した藤井総長のもとで選考会議の改善に向けた議論が続けられてきた。今月17日に公表された最終報告は昨年の経緯を踏まえ、総長経験者は選考会議の委員に就けないようにすべきだと提案した。「大学経営の透明性・公平性を図ることが重要」として排除を求めることにしたという。

 また、最終報告は、東大で経営を担う理事や常勤教職員を経験した人についても、選考会議委員への就任には制限を設けるべきだとした。具体的には、理事は退職後6年間は委員に就けないようにすべきだと提言。さらに、元理事や10年以上東大の常勤教職員だった人が委員に就任する際は、その人数の合計を、選考会議の学外委員の2割以内に抑えるべきだとした。

 加えて、東大だけでなく各国立大の学長選考会議が、学長を選んだり牽制(けんせい)したりする役割を担うにもかかわらず、そのメンバーの選出の仕組みは学長の意向が反映されやすいものになっていることを問題視。こうした現行制度について「法制度的な課題」があると指摘した。

 藤井総長は最終報告で、「大学自らが選考会議を改革する努力を重ね、社会に取り組み状況を明らかにすることが重要」と言及。学内幹部のほか、学外や学生など多方面から意見を聴いて検討したことを強調した。(編集委員・増谷文生

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