老舗の日本酒蔵がウイスキーに挑戦 酒造りの「二毛作」

河合博司
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 【山梨】江戸末期(1850年ごろ)創業の富士河口湖町の老舗酒蔵が、畑違いのウイスキー造りに挑戦している。日本酒の酵母や米を使い、香り豊かな独自のウイスキーを造ろうと奮闘中だ。冬に日本酒を、春から秋にかけてウイスキーを造る「二毛作」で、消費者のニーズに応える。

 酒蔵は富士山の伏流水を酒造りに生かしてきた井出醸造店。昨年7月、ウイスキーの製造免許を取得。新たに「富士北麓(ほくろく)蒸留所」の看板を掲げ、木製樽(たる)や蒸留機の設備投資には数千万円をかけた。原料が大麦だけのモルト、大麦に米を混ぜたグレーンの2種類を1年目は計9キロリットル、2年目は計15キロリットル造った。

 井出與五右衛門社長(62)がサントリーやニッカなど大手が牛耳るウイスキー業界への挑戦を決めたのは、世界的にウイスキーの需要が伸びているからだ。コロナ前、店には日本酒を目当てに、欧米から年間約1万5千人の外国人が訪れていた。「ジャパニーズウイスキーも飲みたい。どうして造っていないのか」と異口同音に言われた。「日本食ブームのおかげです。ワインと日本酒にとどまらず、国産ウイスキーにも関心が集まっていると気づきました」

 ウイスキーの醸造では、日本酒造りで培った醸造技術と米の知識をフル活用している。「原料配分や酵母の選択、作り手の資質が独特の風味を引き出すはずです」と気合を入れる。

 「甘くスモーキーな香り」(井出社長)を出すには、醸造、蒸留の後、未熟なウイスキー(ニューポット)を樽で5~10年、寝かせる工程が必要だ。貯蔵場所を広げるため、クラウドファンディング資金調達を試したら、早々に目標金額500万円の3倍を超える資金が集まった。

 12日に樽で約1年寝かせたウイスキーを使い、初商品のハイボール缶を発売した。本格的な自社蒸留ウイスキーの出荷は2年以上先になる。(河合博司)