野生なのに人懐っこいイルカ 話題だけれど「できれば別の場所へ」

菊地洋行
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 三重県尾鷲市の近海に、昨年から野生のイルカがすみ着き、人懐っこい様子がダイバーや漁業関係者の間で話題になっている。ダイバーのすぐそばまで近づいたり、水中カメラなど興味を持った物を口先でつついて遊ぶようなしぐさも見せたりしている。

 今月11日、東京都の水中写真家、堀口和重さん(35)が尾鷲湾で別の話題の取材中にイルカと遭遇。一緒に潜ったダイバーにじゃれつく様子を写真や動画で撮影した。

 このイルカは昨夏、同市三木浦町近辺の賀田湾でよく目撃されたが、今夏以降は尾鷲湾での目撃が多いという。ダイバーらは、ブリやタイを養殖するいけす周辺でイルカがよく見られることから、養殖用のエサのおこぼれを食べに来るアジを狙っているのではないかと推測している。

 このイルカを調査した三重大大学院生物資源学研究科付属鯨類研究センターの森阪匡通(ただみち)准教授(動物行動学)によると、遺伝子検査でミナミハンドウイルカとハンドウイルカのハイブリッド(交雑種)と判明。オスの成獣という。

 イルカ同士でじゃれ合うことはよくあり、水中で人に近寄ってくるのも遊びの延長のような行動だが「積極的に人に触れたり、体を当てにきたりするのは珍しい」と森阪准教授。エサがあって安全な場所に、単独または少ない個体数ですみ着くことは、世界的にもよくある例だという。

 森阪准教授は「人懐っこくても野生の生き物。噴気孔(鼻)を塞ぐ、目などのデリケートな部分を触るといったイルカが嫌がることをすると、強力な尾びれでたたかれたり、体当たりされたりして死に至ることもあるので注意が必要」と呼びかけている。人からのエサやりもだめだ。「エサが適切でない場合、イルカに悪影響が出る上、エサを与えない人に危害を加えることになりかねない」という。

 イルカに軒を貸している尾鷲市は、海水浴場の三木浦マリンパークがイルカの出没を理由に昨夏から2年連続で遊泳禁止となったことから「できればどこか別の場所へ行って欲しい」(商工観光課担当者)。イルカウォッチングなどの積極的な観光活用はせず、静観する意向だ。(菊地洋行)