佐伯湾の恵みマリアージュ 海底熟成酒と牡蠣 セット販売

寿柳聡
【動画】海の恵みマリアージュ 漁師が手がけた牡蠣と海底熟成酒を販売=寿柳聡撮影
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 大分県佐伯市の佐伯湾で養殖したマガキと、養殖場そばの海底で数カ月間熟成させたお酒の販売に、同市鶴見地域の漁師たちと地元の酒店経営者らが連携して取り組んでいる。海底で揺られた日本酒やワインの試飲会では、地上より熟成が早いという感想も多く、反応は上々だという。

 「波音や船の往来など、海の中で24時間流れているいろんな音による微振動が、お酒の熟成を促すと言われています」。11月12日、佐伯湾のカキ養殖場の海底にお酒を入れたかごを沈める作業を終えた船曳網漁師芦苅誠仁(まさひと)さん(46)が海底で寝かすことで期待する効果を説明した。

 沈めたのは県産の焼酎と清酒、ワインに、フランスとチリのワインを加えた約350本。地元でフルタ酒店を営むソムリエの古田茂子さんが、熟成に向いた銘柄を選んだ。キャップ部分に海水の浸入を防ぐ特殊な封印が施されている。

 芦苅さんはカキ養殖に取り組む漁師グループ「鶴見地域シングルシード養殖協議会」の広報部長だ。協議会には20~60代の漁師10人が参加。稚貝を専用のかごに入れ、プランクトンが豊富な海面近くで養殖している。小ぶりだが身がたっぷり詰まったカキが育つ。漁業をどう持続させていくか、市も交えて模索するなかで2018年度から試験養殖を開始。昨年度は試験出荷し、市内の飲食店6店舗で「佐伯真牡蠣(まがき)フェア」も実施した。

 だが、新型コロナ禍や魚価低迷に燃料費高騰も追い打ちをかけ、漁業を取り巻く環境は厳しい。古くからの漁師町である鶴見地区では、水産物の加工・小売業者や飲食店など関連の仕事で生計を立てている人も多く、「漁師がおらんごとなったら、やっていけん」との声が聞かれる。

 酒の海底熟成は、そんな漁師らの空き時間と海中の空きスペースを使った増収策という一面もある。

 熟成酒は酒類販売免許を持つフルタ酒店などが販売。漁師たちには酒を沈めたり引き揚げたりする作業などの委託料が入る仕組みだ。昨年12月、試験的に約150本を沈めて今年6月に陸揚げした。瓶にはフジツボや白い泥のような石灰藻がつき、一つ一つ表情が違っていた。7月から酒造会社や宿泊・飲食関係者、百貨店のバイヤーなどに向けた試飲求評会を重ね、「明らかに味わいがまろやかになった」など高い評価をうけた。

 今回沈めたお酒は来年3月ごろ引き揚げられる。市はふるさと納税の返礼品として、熟成酒とカキのセットや単体の予約をとり始めた。クラウドファンディング「sandwich」(https://sandwichcrowd.com/project/detail/911別ウインドウで開きます)でも返礼品として扱い、活動への支援を求めている。

 芦苅さんは「カキと海底熟成酒を一緒に楽しんで、鶴見の海を感じてもらえたらうれしい」と話している。(寿柳聡)