白血病克服、命の尊さ伝える 医師の熊谷さん中学で講演

三沢敦
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 中学時代に患った急性リンパ性白血病を乗り越え、医師になった熊谷知香さん(28)が19日、長崎市立日見中学校であった「命の講話」で講演した。闘病中に過ごした院内学級で当時、平野俊男校長が教えていた縁で実現。「『命の役割』~大人になれなかった命と大人になれた命」をテーマに、死の淵に立たされた日々を静かに振り返り、命の尊さを訴えた。

 「私は中学3年の1年間をほぼ病院の中で過ごしていました」

 全校生徒149人が集まった体育館で、熊谷さんはこう語り始めた。

 「血液のがん」と呼ばれる急性リンパ性白血病が見つかったのは、部活でバレーボールに打ち込んでいた中学3年の5月。首のあたりが腫れて痛んだ。長崎大付属病院に入院して検査した結果、病気が判明。抗がん剤治療を受けながら、高校進学を目指して院内学級で学び始めた。

 1年間は苦難の連続だった。朝、目覚めると、副作用で抜け落ちた髪の毛で枕が真っ黒に。体がきつくて院内学級に行けず、病床で授業を受ける日もあった。卒業用写真を撮るため、外泊許可をもらって帰宅していたとき、右半身が動かなくなった。副作用による脳梗塞(こうそく)だった。「怖くて怖くて。心が暴れそうになりました」と振り返る。

 そんな熊谷さんを救ったのが「絶対治してやるけんな」という主治医の言葉だ。あきらめずに治療と勉強に励み、志望校に合格した。「自分と同じような子どもを助けたい」と医師を志すようになったという。

 長崎大医学部を卒業し、現在は研修医として国立病院機構長崎医療センターに勤める。来春には小児科医として配属される予定だ。

 「今も壁にぶつかるとあの頃を思い出します。白血病を乗り越えた経験は自分に自信を与えてくれる宝物になっている」と熊谷さん。入院中、院内学級でいっしょに学んだ友達が何人も亡くなったことにも触れた。「みなさんが今こうして学校で勉強できるのはけっして当たり前のことではありません。そのことを忘れず、今を精いっぱい生きてください」と呼びかけた。

 平野校長は、院内学級の頃の熊谷さんについて「予習や復習もしっかりこなす、利発な子どもでした」と振り返る。希望の高校に合格し、院内学級を巣立つとき、「先生、一生忘れません」と言われたことが一番の思い出という。

 自身も4年前、悪性リンパ腫を発病。抗がん剤放射線治療の苦しみで夜も眠れない日々が続いた。「もし回復して現場復帰がかなうなら、子どもたちに命の大切さを伝えたい」。そんな使命感を抱き、自分より若くして生死の境をさまよった「教え子」の講演会を企画したという。

 講演後、3年生の松尾美(はる)さんは、生徒を代表してお礼の言葉を述べた。

 「ここにいるみんなと一緒に命あるもの全てに優しくし、命の大切さについて学びつづけたいと思います」(三沢敦)