静銀と山梨中央、提携から1年 効果は「想定以上」

和田翔太
[PR]

 静岡銀行山梨中央銀行が包括業務提携「静岡・山梨アライアンス」を締結してから1年が経過した。この間、人材交流や共同店舗の設置など両行の関係は急接近している。初年度の提携効果は約29億円(5年間で換算)にのぼり、両頭取は「想像以上」と口をそろえる。

 「もう1歩踏み込んでなにかできないか」

 昨年7月、静銀の柴田久頭取と山梨中央の関光良頭取は、静岡市清水区のしずぎん本部タワーで、地方銀行が置かれている現状や課題について議論した。

 長引く低金利環境により、地銀を取り巻く環境は大きく変わりつつある。従来のビジネスモデルが成り立たなくなる中、政府と日本銀行は地銀再編を促す支援策を打ち出し、経営統合の動きが相次いで表面化している。

 そんな中、両行が目指したのは経営統合や合併ではない、地域に根ざした「地銀連携」の成功モデルだった。経営統合や合併について、両行の頭取は提携時、「全く想定していない」と強調した。

 両頭取の会合からわずか3カ月。2行は互いの独立経営を前提に、関係強化に向け、手を握った。

 両行は昨年10月の会見で、提携効果について2行合わせて「5年で100億円」との目標を示した。静銀は8日の決算発表で、両行による提携効果について今年度第2四半期までで、5年換算にすると約29億円にのぼると発表。柴田頭取は、「当初予想していた以上に取り組みが進んだ」と自信を見せた。

 効果額に大きく寄与している分野の一つが、証券分野での協業だ。静銀は4月、山梨中央の地盤である山梨県内に初めてグループ会社で証券業務を担う静銀ティーエム証券の店舗を開設した。山梨中央が紹介する顧客に金融商品を提案できるようになり、口座開設件数は約半年で860件、預かり資産の販売額は約52億円を超えた。

 柴田頭取は「目標金額を大きく上回る予定。次年度以降も中心的に取り組もうと順調に進んでいる」と手応えを口にした。

 地域を巻き込んだ取り組みも進む。両行は提携後、地方創生分野など10の分科会を設置。月1、2回のミーティングで、両行員らが独自のアイデアを出し合い、収益拡大のための事業を成立させている。

 今年4月からは農業経営のプロを育成支援するアグリビジネススクールを開設。8月には両県への移住や定住を促進するセミナーを開催した。そのほか両行の取引先企業を引き合わせて販路拡大を目指す商談会も積極的に開催している。

 山梨中央のアライアンスの担当者は分科会の位置づけとして、「副次的なものではなく、本業の一つとして考えている」とさらなる収益アップに期待する。

 人事交流も進む。これまでに両行で20人ほどの人事交流が行われた。互いに先行する分野の部署に行員を派遣することで、ノウハウを吸収することが狙いだ。

 山梨中央から静銀に出向している久保田一哉さん(31)は「意思決定のスピードが早く、一人一人が積極的に新しいものにチャレンジしている」。若尾晃樹さん(34)は「多様なバックグラウンドを持つ人たちと関わることで視野が広がった」と話す。

 提携から1年。8月には両県をつなぐ中部横断自動車道が全線開通した。今後も、地域を越えたさらなる取り組みの加速が予想される。(和田翔太)