気候危機、声上げる若者たち 「私たちの未来が決まってしまう前に」

編集委員・石井徹
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 英国で開かれた国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)では、温暖化対策の強化を訴える大規模なデモ行進が繰り広げられた。「気候正義」を求める若者の声は、家庭や学校、会社、社会、政治、国際社会など、あらゆる階層で広がりつつある。

政策提言・環境教育 大人も一緒に

「渋谷COP」を立ち上げ、英国で学ぶ 佐座槙苗さん(26)

 COP26に合わせて「渋谷COP」を立ち上げ、研究者や企業の方、アーティストなどとオンラインイベントを連日開催しました。私もCOP26の会場から連日動画を送りました。

 パリ協定が掲げる、気温上昇を産業革命前の1.5度に抑える目標を知ってもらうこと。そして若者参加での循環型の都市を実現することを目指しています。渋谷は若者の街で、世界的にも知られる象徴的な場所。2050年のサステイナブルな渋谷のあり方を考えて、区長に提言する予定です。

 今は、ロンドン大学大学院で持続可能な開発計画を学んでいます。南アフリカでは干ばつのせいでバケツ1杯の水をくむために1日かかる。コソボでは暖房で使う石炭のためにぜんそくに。南太平洋ソロモン諸島の友人は、海面上昇で故郷の島に住めなくなり、豪州に移住しました。気候変動の影響を受けた生の声に触れると同時に、彼らから「経済も安定し、技術や人材もある日本は何をしてくれるのか」という声に考えさせられました。

 昨年、COP26の延期を受け、世界の若者が開催した模擬COP「Mock COP26」のグローバルコーディネーターとして関わることになりました。140カ国以上から330人超の若者がオンラインで参加し、COP26と各国首脳に、気候非常事態や環境危機の教育を行うことなど18の政策提言をしました。

 「Mock COP」の政策を日本で実現するために、一般社団法人「SWiTCH」を立ち上げ、活動を始めました。企業や省庁、若者団体を回ったことで、同じ思いを持った人と縁ができたと同時に、日本と世界の情報格差にも気づきました。

 若者だけでは気候危機に立ち向かうことはできません。大人世代の責任を追及する若者もいますが、それだけでは分断してしまいます。足りない経験や知恵を補ってもらい、若者と大人世代が一緒に取り組むことが必要です。

SDGs 企業出て追求

社会人経験し活動を模索 宮﨑紗矢香さん(24)

 昨年4月に入社した大川印刷(横浜市)を今年8月に辞めました。社員約40人で創業140年の老舗印刷会社です。2018年には政府が主催する「ジャパンSDGsアワード」のSDGsパートナーシップ賞を受賞するなど、環境印刷で知られています。

 大学4年の時、グレタ・トゥンベリさんの演説を聞いて衝撃を受けて「フライデーズ・フォー・フューチャー(FFF)東京」に参加、世界一斉行動の「グローバル気候マーチ」などでオーガナイザーを務めました。

 就職活動中、多くの企業にSDGsウォッシュ(見せかけのSDGs)を感じましたが、大川印刷なら働きながら社会活動も続けられると思って入社を決めました。

 実際に1年目からいろいろ経験させてもらいました。社内では働き方改革や気候危機のプロジェクトを企画、社外のシンポジウムに社員代表として参加することもありました。今年6月には、SDGs推進企業でありながら、「SDGsは大衆のアヘンである」を掲げる斎藤幸平・大阪市立大准教授を呼んで一般向けの有料のオンラインイベントを企画、約500人も参加してくれました。

 ただ、イベントの手応えは感じられた一方で、今後の自分のキャリアアップを考えたときに、どれだけ得られるものがあるのかについては、見込めるものが少ないとも思いました。年齢構成として若手が数人のため、頼られることは多くても目指すべきロールモデルが見いだしづらいように感じたのです。いろいろ考えた末に、社外で自分の可能性を追求しようと思って、退職を決めました。

 いまは教育関係の場づくりを考えています。いま就活している人も、SDGsで有名な企業に入社した後、自分の理想と現実の仕事に悩むこともあるはず。人生の進路を考える時には、企業への就職以外の選択肢が必要だと感じています。

家族説得 食から見直し

環境運動に取り組む高校3年生 山本大貴さん(18)

 都立高校に通う受験生です。新型コロナ緊急事態宣言で、自宅での時間が増えた昨春、「フライデーズ・フォー・フューチャー(FFF)」のオンラインウェビナーに参加し、気候危機の深刻さに衝撃を受けて運動に参加しました。

 コロナ禍でしたが、国に対策の強化を求める署名を集めたり、国会前でプラカードを掲げたり、オンラインの音楽ライブイベントを主催したりして、気候危機を訴えました。

 私が住んでいる東京都調布市では、市議会議員の部屋を回って気候危機を訴え、ゼロカーボンシティー宣言を求める陳情書を提出。今年4月には市と市議会の両方が、宣言してくれました。

 活動の土台には家族の協力があります。私の家では、昨年7月からビーガン(完全菜食)生活をほぼ続けています。畜産業からの温室効果ガス排出がとても大きいと知り、行動せずにいられなかったからです。両親は当初、難色を示していました。当時、中学2年の弟もおり、成長期に十分な栄養を取れるのかという心配もあったようです。

 栄養面の問題がなく、メリットが大きいことを説明し、2週間かけて植物性中心の食生活に移行していきました。結果的には、以前より食の幅が広がり、食べることが楽しくなりました。体力が回復しやすくなり、体はかなり軽くなりました。味覚も変化して、以前より薄味を好むようになりました。

 余計な脂肪がつかず、けがの治りも早いと、菜食はアスリートにも広がっています。FFFを始めたグレタ・トゥンベリさんも、同じように両親を説得して家族全員が菜食になったことは、後で知りました。

 今春、日本が削減目標の引き上げを決める前の1カ月間は、毎週金曜日、学校を休んで霞が関や国会前でストライキをしました。先生には「意義は認めるし、個人の自由なので止めないが、学校が一番大事だからね」と言われ、あまり歓迎されませんでした。私は「いま声を上げなければ、私たちの未来が決まってしまう」と説明しましたが、完全に理解を得るのは難しかったです。

取材を終えて

 気候変動や生物多様性のような地球環境の危機は、人類が初めて経験することだ。答えを持っている救世主は存在しない。いま、この世界に生きている、私たち一人一人が、見つけ出していくしかない。

 解決策はどこにあるのか。それを考える際に、国や人種、世代、ジェンダー、貧富などの壁は存在しない。総意を結集しない限り、よりよい答えを見つけることはできない。中でも若者は重要だ。これまでに若者以外が、世界を変える主体になったことがあるだろうか。若者はいつも歴史の中心にいる。

 私たちは、若い世代の意見を無視し過ぎてきた。家庭や学校、職場、社会など、あらゆるレベルで、もっともっと若者の声に耳を傾ける必要がある。(編集委員・石井徹

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