今年もインフルエンザワクチン打ちました 流行の恐れ、潜在的に高く

酒井健司
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 昨冬はほとんどインフルエンザは流行せず、推計では例年と比べて約1千分の1でした。インフルエンザの減少に新型コロナの流行が関係していることは間違いありません。インフルエンザと新型コロナは、どちらもウイルスによる呼吸器感染症で感染経路は似ており、新型コロナの感染対策をすればインフルエンザも減ります。

 新型コロナウイルス、とくに変異株はインフルエンザウイルスよりも感染力が強いです。まったく免疫を持たない集団で一人の感染者が何人に感染させるかの値を「基本再生産数」と言いますが、インフルエンザウイルスは高くても2~3、新型コロナのデルタ株が5~8ぐらいだとされています。新型コロナを抑え込める強い感染対策を行えばインフルエンザの流行も抑えられるはずです。ただし、基本再生産数はあくまでもまったく免疫を持たない集団での値なので、実際の集団には単純には適用できません。

 さて、今冬はインフルエンザは流行するでしょうか? 正直に言えばわかりません。緊急事態宣言は解除され行動制限は緩くなったものの人流は元には戻っておらず、人前でマスクをしている人はまだ多いです。それに、発熱や呼吸器症状があれば休みやすくなりました。新型コロナの流行以前には「多少の熱ぐらいなら風邪薬を飲んで働け」という風潮があったのがうそのようです。例年ほどはインフルエンザは流行しないかもしれません。

 一方で、昨シーズンにインフルエンザは流行しておらず、集団中に免疫を持っている人の数は少なくなっており、そのぶんだけ流行する潜在的な可能性は高くなっています。最悪のシナリオは新型コロナの第6波とインフルエンザの流行が重なることです。インフルエンザが流行しない可能性に賭けて対策をおろそかにするわけにはいきません。

 そんなわけで今年もインフルエンザワクチンを接種しました。医療従事者はとくにワクチンの優先度が高いです。発熱患者さんに接するため感染の機会が多いことと、重症化するリスクの高い高齢者や持病のある患者さんにうつさないようにするためです。

 医療従事者でなくても、インフルエンザワクチンはコスト対効果の高い予防策です。新型コロナほどではありませんが、インフルエンザも十分に警戒すべき疾患です。予防できる病気は予防しましょう。もちろん、ワクチンを接種したからと油断せずマスクや手洗いなどのワクチン以外の感染対策も引き続き行っていきます。(酒井健司)

酒井健司
酒井健司(さかい・けんじ)内科医
1971年、福岡県生まれ。1996年九州大学医学部卒。九州大学第一内科入局。福岡市内の一般病院に内科医として勤務。趣味は読書と釣り。医療は奥が深いです。教科書や医学雑誌には、ちょっとした患者さんの疑問や不満などは書いていません。どうか教えてください。みなさんと一緒に考えるのが、このコラムの狙いです。