羽生善治九段「ひどい勘違いだった」 佐藤天彦九段と血まみれの激戦

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【順位戦live】▲羽生善治九段―△佐藤天彦九段【第80期将棋名人戦・A級順位戦】
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朝のハプニング

【観戦記】A級順位戦4回戦 先手▲羽生善治九段(1勝2敗) 後手△佐藤天彦九段(1勝2敗)

 ここ30年のA級順位戦で3敗しての挑戦権獲得は5例しかない。それもすべてプレーオフで単独首位はない。1勝2敗同士の本局は二人とも順位が悪く、敗者は挑戦が難しくなるだけでなく残留にも影響する一戦だ。

 10月28日午前9時半前、将棋会館に入る羽生の姿を見かけた。頃合いを測って特別対局室へ。佐藤は午前9時52分ごろ入室する。

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A級順位戦4回戦で佐藤天彦九段と対戦した羽生善治九段=2021年10月29日午前0時36分、東京都渋谷区、村瀬信也撮影

 両者が駒を並べ終えて、羽生が余り歩2枚を駒袋にしまうと、将棋会館が揺れた。ふたりが周りを見回す。茨城県南部が震源の地震で、将棋会館のある渋谷区は震度2だった。ハプニングはあったがすぐに平静に戻り、午前10時につつがなく対局が始まった。

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▲7六歩  △3四歩1 ▲2六歩1 △8四歩 ▲2五歩1 △8五歩3 ▲7八金1 △3二金 ▲2四歩2 △同 歩 ▲同 飛  △8六歩1 ▲同 歩1 △同 飛1 ▲3四飛1 △3三角2 ▲5八玉11 △5二玉2 ▲3六歩2=図(指し手の後の数字は消費時間〈分〉)

 後手の佐藤が横歩取りに誘導した。▲5八玉から▲3六歩とする青野流の対策で、後手が避ける傾向にあり、実戦数は減っている。

 対して△4二銀から△2三金とするのが昨年末に出た手法。△8四飛に▲2五飛なら△2四金と飛車を押さえ込むつもりだ。羽生は角交換から▲7七桂で▲8五飛の飛車交換を狙う。(君島俊介)

△4二銀2 ▲3七桂4 △2三金1 ▲3五飛1 △5一金2 ▲3八銀11 △8四飛3 ▲3三角成11△同 桂 ▲7七桂

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持時間各6時間

消費 ▲47分 △18分

羽生九段「ひどい勘違いだった」

 羽生は5月に定跡書を出した。さまざまな戦型から36のテーマを取り上げて解説している。執筆を通して「戦型によって定跡が細分化されていることと、結論が変わるスピードが速い印象を持った」という。疲れ知らずで深掘りできる将棋ソフトの影響は大きい。5年前にはなかった戦術がタイトル戦で指されることも多い。本局もそうした形の一つだ。

 後手は左金が囲いから離れて飛車交換に弱い。図で△8九飛成は▲8五飛で先手有利。△4四角▲6五飛△8九飛成の工夫も、▲6六歩が好手で後の▲5六角が攻防に利く。△2四飛が佐藤の注文。9月の第4回ABEMAトーナメント決勝第5局藤井聡太三冠(先)―佐々木勇気七段戦で指されていたが、公式戦では初だった。

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図は▲7七桂まで

 羽生は「ひどい勘違いだった…

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