九州サッカーの未来が開けた アビスパやサガン躍進、他クラブも個性

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乾真寛のサッカーウォッチ

 佳境を迎えた今季のJリーグでは、九州勢が例年以上に話題となった。残留を果たしたアビスパ福岡に、前評判を覆して躍進したサガン鳥栖。他クラブも着実に歩みを進めており、今後の九州サッカー界に明るい展望が開けていると、福岡大の乾真寛監督は語る。

 九州のJ各クラブの戦いぶりは今季、サッカー界に新たな希望を与えてくれている。

 まずアビスパ福岡。ついに昇降格を繰り返す「5年周期」ジンクスを打ち破った。それも偶然ではなく、クラブの確かなビジョンに基づいたものだ。フロントが強化費をきちんと用意し、補強も適時で的確だった。そこにブレない長谷部采配が加わり、想定を超える快進撃を演じた。成績だけでなく、クラブ運営、経営や集金、人材マネジメントの面でもJ1仕様にやっと脱皮した。都市規模で考えても、九州内でビッグクラブを目指す土台となる元年に、ようやく立てた実感をファンも共有できた。

 ここ10年で九州のリーダー役を担うサガン鳥栖は、サッカーの中身で革新的な風を吹かせた。地方クラブはこれまで、堅守速攻で守備に偏ったうえでの健闘がほとんど。だが鳥栖は主導権を握り、特に夏場までは川崎フロンターレにも劣らぬワクワク感や面白さで上位争いを演じた。さらに下部組織から育てた選手を迷いなく起用し、現代サッカーのトレンドを戦術的に落とし込む。九州発信で、J全体の人材育成へインパクトを与えた。

 優勝した川崎に土をつけたこの2クラブが、J1に常にいて上中位を安定的に争う。そこへ他クラブも絡み、九州全体で競い、盛り上がるのが理想だ。その土壌も確実にある。

 残念ながら降格が決まってしまった大分トリニータにしても、確かなクラブの色が築かれている。大企業のバックアップがなく予算規模が限られる中、コストパフォーマンスで勝負。選手を使いながら育てるスピリットは受け継がれており、必ずJ1に戻ってくる力がある。

 J2Vファーレン長崎は2年続けてJ1昇格を争った。2024年に新スタジアム開業を控える。まちづくりと一体になった挑戦を実らせるためにも、必ずJ1でこけら落としを迎えたい。J3では初参戦のテゲバジャーロ宮崎とJ2返り咲きをめざすロアッソ熊本が優勝を争い、地元の新たなファン、サポーターも増えつつある。

 九州全体でサッカー熱が高まることで、未来のサッカー文化の定着や熟成の姿が見える。そんな転機になったとのちに思うであろう1年だった。

 いぬい・まさひろ 1960年、島根県出身。福岡大サッカー部監督。教え子に元日本代表FW永井謙佑(FC東京)らがいる。