日本、初の石油備蓄放出へ 米に同調 価格引き下げ効果は不透明

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真海喬生=ニューヨーク、新田哲史
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 原油価格の高騰を受け、米バイデン政権は23日、5千万バレルの石油備蓄を放出すると発表した。米国の発表によると日本、中国、インド、韓国、英国などの石油消費国と協調して放出する。供給量を一時的に増やし、価格を下げるねらいがある。米国の呼びかけで主な消費国が協調するのは、極めて異例だ。

 日本も国家備蓄を初めて放出する方針で、岸田文雄首相が24日にも表明する。放出量は国内需要の数日分とみられる。

 米国は今後、数カ月かけて放出する。他の国とも協議し、「必要に応じて追加措置を講じる準備ができている」という。

 ただ、協調放出でいったん原油価格が下がってもすぐにもとに戻るとの見方もあり、効果は不透明だ。

 英石油大手BPによると2020年の1日の石油消費量は米国が1717万バレル、中国が1422万バレル、日本が326万バレルと大量だ。各国の放出分を合計しても世界の消費量のごく一部にとどまる。指標となる米国産WTI原油の先物価格は米国の発表後に一時、1バレル=78ドル台後半と前日より約2ドル値上がりした。市場は協調放出について織り込み済みで、発表を受けて原油を買う動きもあった。

 経済活動の再開で原油は値上がりしていた。10月下旬には、WTI原油の先物価格が1バレル=85ドル台と約7年ぶりの高値を付けた。足元では欧州で新型コロナの感染が再拡大していることもあり一時下がったが、米国ではガソリン価格が高止まりし国民の不満は高まっている。バイデン政権は感謝祭休暇を前に、備蓄放出を発表して価格を抑え、支持率の回復につなげようとしている。

価格下げる放出は想定外

 石油備蓄をめぐっては、過去に国際エネルギー機関(IEA)の要請に応じ、米国や日本など加盟国が放出した例がある。1991年の湾岸戦争や2005年の米国ハリケーン被害、11年のリビアの政情不安などだ。いずれも紛争や災害で供給不足の恐れがある状況を受けたもので、価格を下げることを目的とした放出はほぼなかった。

 日本政府は難しい判断を迫られた。岸田首相は「法的に何ができるか検討を進めている」とし、国家備蓄を初めて取り崩す案を検討していた。

 国内には国が所有する国家備蓄と、石油会社に法律で義務づける民間備蓄などがある。国家備蓄は9月末時点で145日分と目標(約90日分)を上回っており、政府はこの「余剰分」を放出する方向で調整している。

 石油備蓄法では、備蓄の譲渡は紛争で供給が不足する事態や災害時に限られている。経済産業省も「価格下落を目的にした放出は想定していない」としており、政府のこれまでの説明との整合性が問われる。協調放出の効果が見通せないなか、国家備蓄に手をつけることには否定的な意見もめだつ。

 消費国が協調放出という異例の対応をすれば、産油国が対抗措置をとるかもしれない。主な産油国でつくる「OPECプラス」はこれまでも追加増産に消極的だった。値崩れをおそれて生産量を抑えることもあり得る。(真海喬生=ニューヨーク、新田哲史)

     ◇

 〈石油備蓄〉日本では1973年の第1次石油危機などを受け安定供給のために70年代に始まった。国が所有する国家備蓄と、石油会社に法律で義務づけている民間備蓄などがある。国家備蓄は全国10カ所の基地や借り上げた民間タンクなどで国内需要の約90日分以上を貯蔵する。民間備蓄は70日分以上と定め、国が購入資金などを支援している。国内の民間タンクを産油国の石油会社に貸与する産油国共同備蓄と合わせると、9月末時点で計242日分の原油や石油製品が貯蔵されている。国家備蓄の対象は原油と灯油だったが、東日本大震災後の法改正でガソリンや軽油、重油も加わった。このほかに、家庭用プロパンガスなどに使われる石油ガスも国家備蓄と民間備蓄がある。

過去の石油備蓄放出

1991年 湾岸戦争に対応…

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