そして私はダンスに還る 河野奈々帆が駆け抜けたNMBという青春

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構成・阪本輝昭
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NMB48 12のスタディー!
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NMB48 12のスタディー! 河野奈々帆さん

 大阪・難波を拠点とするアイドルグループ「NMB48」のメンバーが小論文に取り組む「NMB48のレッツ・スタディー!」(レッスタ)の連載が始まって2年半。NMB48は活動12年目に入り、「レッスタ」も新たなシリーズ「お金と経済の話編」を近くスタートさせる。

 NMB48で活躍するメンバーは、日々のステージや活動の中でどんなことを考え、何を学びとっているのか。

 12の質問を通じ、アイドルから学ぶ「12のスタディー!」を、「レッスタ」の番外編としてお届けする。

 初回は、11月30日をもってNMB48を卒業することを発表した河野奈々帆さん(19)。ダンスに秀でたメンバーとして知られ、表現力も高く評価されていた河野さんは、活動の中で何をつかみ、将来をどう描いているのか、聞いた。

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河野奈々帆さん

     ◇

「本当にしたいことは…ダンスを極めること」

 ――このタイミングで卒業を決めたのはなぜでしょうか。

 河野 この春に高校を卒業した後、「この先、自分が本当にしたいことは何なのだろう」ということを考えるようになりました。それと同時に「自分はやはりダンスを極めたい」という気持ちも大きくなっていったんです。

 決して容易な道ではないけれど、ダンスパフォーマンスで自分を表現する道に進みたい、と考え、卒業を決意しました。今年7月にあった若手メンバーによるコンサート「難波新鮮組公演」で、表情管理なども含めたパフォーマンス全体を多くの人に褒めてもらえて、自信がついたことも要因です。「ここで満足せず、さらに上を目指さなければいけない」と思いました。

 ――ダンスの得意なメンバーが集まってつくるNMB48内のユニット「だんさぶる」で3年ほど活動しました。

 河野 「だんさぶる」での活動は、私にとってすごく大きかったです。私に居場所を与えてくれました。今回の私の決断を後押ししてくれたのも、「だんさぶる」で積んだ経験と、そこで得た喜びです。

 私は4歳のころからダンスをしていました。だから自信はあったのですが、私がやってきた激しい系統のダンスと、アイドルがみせるダンスとでは求められる表現が異なるようで、ダンスの先生にも「河野、今までのダンスはいったん捨てよう」といわれました。

 でも、ずっとやってきたダンスのくせはなかなか抜けない。工夫して加えたつもりのアレンジが、アイドルのダンスでは「余計なもの」に映ることもあって、難しいなと感じました。

 「だんさぶる」以前の私は、あこがれのNMB48に入ることができたものの、その次の目標を見失って、さまよっているような状態でした。自分の武器だと思っていたダンスもダメなのであれば、どうしたらいい、と。

 私は同期の研究生の中では一番手で正規メンバーに昇格させてもらったのですが、ほかのメンバーがどんどん活躍していく中で、自分は彼女たちに追い越されていくように感じられ、つらい日々でした。

「だんさぶる」がくれた私の居場所

 ――そんなとき、「だんさぶる」立ち上げの話があったと。

 河野 はい。どうもそんな動きがある、と耳にして、ダンスメンバーとして鳴らしていた先輩の石田優美さんに「私も入りたいです」と直談判しました。そこがスタートです。

 「だんさぶる」では、私の好きな「かっこいい系」の曲を思う存分踊ることができました。同時に、メンバー全員がダンスに対して熱い思いを持っていて。時に励まし合い、時に激しく意見をぶつけ合いながら歩むなかで「私の居場所はここだ」と確信できたんです。

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NMB48のユニット「だんさぶる」メンバー。後列右端が河野奈々帆さん=(C)NMB48

 「だんさぶる」単独でのライブも何度もやらせてもらいました。特に思い出深いのは、コロナ禍の昨年8月、オンラインで開催されたライブです。

 「噓(うそ)の天秤(てんびん)」という曲をソロでさせてもらいました。振り付けも一から自分で考えて。ダンスはやっぱり自分を出せる一番の場所だなあ、と感じましたし、踊っているときの私は自然と笑顔になれるんだということにも改めて気付きました。

 ――河野さん流のダンスが生かせる場所であったということですか。

 河野 確かにそうなんですが、「だんさぶる」が踊るのは決して「かっこいい系」の曲だけではなく、「かわいい系」もあるし、ジャンルは幅広いです。必ずしも私の得意なジャンルばかりではありません。

 「だんさぶる」は、ダンスありきのユニットなので、全ての曲をダンス起点でとらえ直します。その中で、ダンスの本質みたいなものが見えてきたように思います。

 それは私なりにいうと、「踊りを自分のものとせよ」ということです。

 曲の世界観をしっかり理解し、歌詞の中に入り込んで、その歌の主人公になりきる。そうすることで、ダンスも表現もその歌にぴったりはまり、違和感のないパフォーマンスになる。

 どんなにダンススキルを磨いていても、気持ちが歌詞に乗っていなければパフォーマンスはちぐはぐになり、アレンジは異物となって、見ている人に「これじゃない」という感じを与えます。

 ダンスに真剣な「だんさぶる」メンバーとの意見のぶつけ合いは、時にけんかみたいになるぐらいでしたが、私自身、学んだことがたくさんありました。

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NMB48のユニット「だんさぶる」メンバーによるパフォーマンス。中央が河野奈々帆さん=河野さんのツイッターより

「ごめん 愛せないんだ」の歌詞世界

 ――11月3日にあったNMB48の11周年コンサート(夜の部)では、メンバー全員にセンター曲が割り当てられ、河野さんは「ごめん 愛せないんだ」という曲でセンターを務めました。

 河野 将来を約束した人がいるのに、パーティー会場で出会った女性に心ひかれてしまう男性の胸の内をうたった曲です。私の大好きな曲のひとつで、センターを務められてとてもうれしかったです。

 ――さきほどの「歌詞の主人公になりきる」という話でいくと、河野さんはどちら側に感情移入して演じたのですか。

 河野 この歌でいうと、歌詞の主人公である「僕」のほうです。交際相手がいるのに別の人に心を動かされてしまい、表面上は余裕のあるふりをしながら、内心は行ったり来たりしている。

 ダメな人だなあと思うし、共感はできませんが、人が誰しも持っているであろう心の弱い部分、優柔不断な部分の現れ方だと考えれば、私の中にも「僕」は住んでいるのかも知れない。そう考えながら、「僕」の心理を色々想像しつつ、それを歩き方や視線の動かし方などに落とし込んで、パフォーマンスに反映したつもりです。

 ――それが「歌詞世界を理解してパフォーマンスする」ということであると。

 河野 「僕」は、パーティー会場で相手の女性にワインをこぼされたことがきっかけとなって会話を交わすことになるのですが、もしかしたら相手の女性もワインをわざとこぼして「僕」を引き留める手段としたのかも知れない。

 相手の側にもしたたかな計算…

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