京大芦生研究林のVR動画作成 森の魅力と保全訴え

永井啓子
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 広大な天然林が残る京都大芦生(あしう)研究林(南丹市)のVR(仮想現実)動画を、京大とKDDI(本社・東京)が制作した。シカの食害で植生の荒廃が進むなどしており、研究者らは森に関心を持ってもらい、保全活動につなげたいという。

 同研究林の面積は約4200ヘクタール(東京ドーム898個分)。1921年に大学が99年契約で地元から土地を借りたのが始まり。2020年には新たに30年間の契約を結び、今年、100周年を迎えた。

 研究林の半分は100年間、人の手が入っておらず、なかには樹齢約200年のアシウスギやブナの森林もある。273種の樹木と654種の草花、120種のシダ植物が確認されており、国のレッドデータブックに載る貴重な植物や新種の発見も少なくない。ガイド団体と連携し、コロナ禍以前には、年間4千人以上のガイド客やハイカーも受け入れてきた。

 だが、近年はシカによる食害が進み、地表がむきだしになって昆虫や植物が見られなくなるなど、森の生物多様性が脅かされている。土壌や川の水質にも影響が出始めているが、シカよけの柵を設置できたのは森全体の面積の1%に満たないという。

 研究林を管轄する京大フィールド科学教育研究センターは2016年から、基金を設けて森林の植生回復などへの支援を訴えている。KDDIとは昨年から連携、基金に寄付を受けるとともに研究林の自然を体験できる動画を制作することになった。舞鶴高専の協力も得て、研究林職員が360度カメラで撮影した映像を高専の学生らが編集。約3分の動画に仕上げた。

 動画はガイドツアーに参加して研究林を巡る内容。草むらから森へ入り、川辺を観察したり、研究林のシンボル「大カツラ」の前で説明を受けたり。上下左右を見渡せて、川のせせらぎやセミの声も聞け、臨場感あふれる映像を楽しめる。

 これまでに、南丹市立文化博物館で12月5日まで開かれている企画展「森と共に生きる・知井地区を中心に―」の関連イベントなどで活用した。今年度中に「シカによる食害」「美しい四季を楽しむ」をテーマにさらに2本を作る予定。来年度の京大創立125周年のイベントで、一般の人も体験できるようにしたいという。研究林長の石原正恵准教授は「VRで研究林に関心を持ってもらい、シカの食害対策や最先端の教育研究を進めるための寄付につなげられたら」と話している。(永井啓子)