第4回尻込みするタリバン、友好団体との関係苦慮「ナカムラに申し訳ない」

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アフガニスタンの首都カブールで2021年8月15日、大統領府を掌握したタリバンの兵士たち=AP
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 中村哲さんの殺害事件の捜査に影を落とす事態が、アフガニスタンで今年8月に起きた。

 イスラム主義勢力タリバンがガニ政権を崩壊させたことで、捜査に関わった人たちが国外に逃れてしまった。容疑者と目される男がタリバンとつながりのある武装勢力のメンバーだったこともあり、タリバンが捜査を放置するおそれが出てきた。

 中村さんが殺害された翌日の2019年12月5日、タリバンはネット上に現地のパシュトゥー語で追悼声明を出した。声明でタリバンは、中村さんのことを「ドクター・ナカムラ」と呼び、「乾燥した砂漠を緑の穀倉地に変えてくれた」と死を惜しんだ。

 犯人像については「(タリバンと対立する)アフガニスタン情報機関や、それに連なる武装グループが関与したとみられている」との持論を展開し、自らの関与を否定した。

 タリバンと何度も接触したことがある外交筋によると、タリバンの中枢幹部は会談のたびに中村さんの事業の成果をたたえ、感謝していたという。

 ただ、タリバンも一枚岩ではない。

 内部には地縁や血縁にもとづく派閥があり、それぞれ異なる考え方を持つ。長年続く日本の支援に感謝する穏健派もいれば、日本を含む外国を一緒くたに敵視する強硬派もいる。

 事件が起きた時、タリバン支持者のなかにはSNS上に心ないメッセージを書き込む者たちもいた。「攻撃万歳」「異教徒は支援をかたりながらイスラム教徒に近づき、信仰心をそいできた」。事件が起きた東部やタリバンの本拠の南部では、外国人を「異教徒」と毛嫌いし、攻撃を正当化する者が少なくない。それは対テロ戦の名のもとに空爆で村人たちを苦しめてきた外国部隊への反発の表れでもある。

 中村哲さん殺害事件 アフガニスタン東部で2019年12月4日、人道支援NGO「ペシャワール会」現地代表で、医師の中村哲さん(当時73)らが乗った車が灌漑(かんがい)の事業地に移動する途中で犯行グループに銃撃され、中村さん、アフガニスタン人運転手1人、同警察官4人の計6人が死亡した。

 20年ぶりに権力を掌握したタリバンは、中村さんの事件をどう扱うつもりなのか。私は今年9月、タリバンに複数いる報道担当者のうち英語が話せるスハイル・シャヒーン幹部にインタビューを申し込んだ。

 くしくもインタビューは、米軍がアフガニスタンを空爆し、タリバンが政権の座を追われるきっかけになった米同時多発テロから、20年目の節目にあたる9月11日に設定された。

 シャヒーン幹部はアフガニスタンではなく、中東カタールにある外交事務所にいた。通話アプリで電話すると、トレードマークの黒いターバンを巻き、長いあごひげを蓄えたシャヒーン幹部が応答した。

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イスラム主義勢力タリバンの報道担当のスハイル・シャヒーン幹部=2020年2月、ドーハ、乗京真知撮影

 タリバンの新閣僚人事や女性の人権問題など聞かなければならないことはたくさんあったが、私は事件の質問から始めた。

タリバン幹部は中村さん事件について何を語るのでしょうか。捜査についての見通しについても、記者が鋭く迫ります。

 ――ドクター・ナカムラのこ…

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