「脱炭素」が生んだ原油高 消費国の放出に、産油国が「報復」懸念も
和気真也=ロンドン、真海喬生=ニューヨーク、長崎潤一郎
米国が日本や中国、インドなどと協調して石油備蓄を放出する。消費国の異例の動きだが、背景には世界的な「脱炭素」の流れに対する産油国の懸念がある。
気候変動対策への機運が世界的に高まるなか、二酸化炭素(CO2)を排出する石油やガスなどへの投資は抑制傾向だ。国際エネルギー機関(IEA)によると、太陽光や風力発電など再生可能エネルギーへの投資は2020年に約3590億ドルで、前年より7%増えた。一方で、原油やガスの開発・生産などへの投資は約3260億ドルと前年より3割減った。コロナ禍で需要が減ったことに加え、脱炭素の流れが増しているためだ。
コロナ禍がいったん落ち着き経済が回復するなか、米国や中国などでエネルギー需要が急増。太陽光や風力発電などでまかないきれなかった需要はガスや石油に向かい、高騰した。
米国などの消費国は、中東諸国やロシアなどでつくるOPEC(石油輸出国機構)プラスに増産を求めた。だが、コロナ禍の再拡大もあってOPECプラスは応じなかった。米国ではガソリン高によって国民の不満が高まり、需給を緩ませる対抗手段として、備蓄を放出することにした。
OPECプラス側には増産し…