五右衛門風呂やピザ窯 空き家を再生、シェアハウスとイベント空間に
荒れ果てた甲府市内の3棟の空き家が、魅力的なシェアハウスやイベント空間に生まれ変わった。土壁やしっくいを使った建物には、五右衛門風呂やピザ窯もある。和洋折衷のユニークな建物で農業も芸術も楽しめる暮らし。空き家率が全国一という山梨県での試みだ。
「結~yui」と題したプロジェクト。JR甲府駅に近い愛宕山の中腹にある空き家のリノベーションが9月に完成した。建築設計事務所「SHOEI」の社長大原勝一さん(57)が中心になり、累計で300人ほどがボランティアでしっくいや土壁を塗る作業にも参加した。
囲炉裏や茶室もあれば、ロシアの暖房器具であるペチカやピザ窯もある。昭和初期の窓ガラスを使ったり、フランス製の古い鏡を洗面所に置いたりし古いものを生かす。盆地を見下ろし、富士山も見える。中庭には上ってくる月を見られるイスも用意し、「月待ちの席」と名づけた。日本の船で使われていた昭和のランプを置き、日が暮れれば、自動的に点灯するようにしている。
大原さんは「古民家のディズニーランドみたい」と言う。「小さい子どもから大人まで、国籍を問わず楽しめると思う」
大原さんは6年前、骨董(こっとう)商の男性が家族で所有するこの家を見せられた。男性は自力で改修していたものの、当時、家の中は物置のようだった。
去年、県の「空き家活用促進事業」の第1号に認定され、大原さんが中心になり、年末から改修を始め、完成させた。施設整備のため県から補助金が出ており、10年以上はこの場所を地域活性化のため活用することになっている。
木造平屋建ては1カ月以上の入居が出来るシェアハウスで、4人が入居できる。鉄筋コンクリートの棟は1年以上の入居が条件で、4人が住める。家賃は1人4万5千円から。今年12月と来年2月から入居が可能だ。
家の前にある農地では、綿を育てて布を作り、有機野菜も栽培する。地域の人が交流できる持続可能な暮らしをしたいという。
昔の日本の生活を日常に取り込みながら暮らす。将来的には、アーティストが滞在しながら、創作する場所としても利用してもらいたいという。大原さんは、「農業とアートを中心に新しい地方の豊かさを一緒に探したい」と話す。問い合わせは、大原勝一さん(055・252・0033)へ。(平山亜理)
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