おっさんよ、過去に学べ 岡崎体育新譜への異論
天草支局長 近藤康太郎
記者コラム 「多事奏論」
猟期が始まり、毎日、山の中を駆けずり回っている。午前2時に起きて、いくらか原稿を書き、朝刊が配達される前、軽トラで真っ暗闇に飛び出す。ひと気のないやぶの中、鉄砲を担いでけものを求めて歩く。一日、口をきかない日もある。こういう生活をしていると、世間につながる回路が、だんだん怪しくなってくる。
ジャーナリストの松山幸雄さん(享年91)が亡くなったのも、2週間遅れて、本紙の追悼記事で知った。
朝日新聞の論説主幹をつとめた人だが、べつに親しかったわけではない。いちどだけ近くで見たことがある。わたしが会社に入ったとき、新人記者を前に講演をした。主題はほとんど忘れてしまったが、今でもひとつだけ雑談を覚えている。
「学生時代はニーチェなんか読んでいた人も、会社に入るとやめてしまう。それじゃだめだよ。とくに新聞記者は」。おおよそ、そういう内容だった。感動し、式後の立食パーティーで恐る恐る松山さんに近づいて話しかけた。「仕事は忙しいんでしょうから、いつ読むんでしょうか?」と聞いた記憶がある。馬鹿な質問である。
新聞記者は、新しいことを…