宇宙はもう「持続不可能」か 下町でスペースデブリに挑むベンチャー

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文・中島隆 写真・藤原伸雄
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 「スペースデブリ」と呼ばれる宇宙ゴミの除去をビジネスにしようというベンチャー企業があります。世界的にも脚光を浴びつつある「アストロスケール」です。創業者兼CEOの岡田光信さん(48)は、どんな思いでこの難題に立ち向かおうとしているのでしょうか。

記事の後半では、岡田さんへのインタビューの一問一答をお読みいただけます。

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岡田光信さん。スペースデブリ除去技術実証衛星「ELSA―d」の模型の前で=東京都墨田区

 あの宇宙で、人工衛星が活躍している。天気予報、カーナビ、放送。私たちの生活に宇宙利用は欠かせない。

 人類が活動するとゴミが出る。宇宙も例外ではない。そのゴミは、たとえばロケットや衛星の残骸だ。硬く、重さ数トンのものも。しかも動いている。1日に地球を16周、東京―大阪間を1分で行く猛スピードで。

 米ソが宇宙開発競争を始めた1950年代以来、だれも宇宙ゴミを除去していない。だから、ゴミは増える一方だ。活動中の人工衛星がゴミと衝突する事故が起こり始めている。

 世界初の掃除を始めます!

 そう決意し、40歳になってすぐ会社を創業した。この春打ち上げた人工衛星でゴミを除去する技術の実証実験をして、成果は順調。2022~23年には衛星の量産をスタート。24年、いよいよ掃除を始める。

 高校1年の時、科学雑誌に出ていたNASAのスペースキャンプに参加した。青いつなぎ、片手に分厚いバインダー、もう片方の手にでっかいコーラ。そんなエンジニアがかっこよかった。

 宇宙飛行士毛利衛さんに会えた。メッセージを手書きしてくれた。

 「宇宙は君達の活躍するところ」

 宇宙にあこがれ、猛烈に勉強を始める。さらに地球環境に興味をもち、学食の割り箸を再利用できる竹箸にする運動をした。ちょうどバブル絶頂のころだった。大人たちがモノを浪費する姿に違和感をいだいた。

 東大4年の冬、阪神大震災で神戸の実家を失い、親族を亡くす。仕送りがなくなって大学院での研究をあきらめ、大蔵省(現財務省)、経営コンサルタント、IT会社経営などと、仕事をかえた。いつも全力投球してきたが……、

 〈自分は何したいんだ?〉

 本棚をごそごそしたら、あの毛利さんのメッセージが出てきた。

 〈情熱の起点は宇宙だった!〉

 IT会社社長の肩書で、宇宙の学会に出向いた。宇宙ゴミをテーマにした分科会が熱く、活況だった。ドイツで専門の学会があると聞いて行った。宇宙ゴミは大問題だ、と口々に言っている。でも、だれも行動を起こしていないようだ。

 はがゆくて学会を中座、文房具屋でアルファベットのブロックを買って会社の名を考えた。宇宙の開発と保護のバランスが大切だ、宇宙の天秤(てんびん)、アストロスケールだ。学会に戻って「宇宙ゴミ除去の会社をつくる」と周りに話した。酷評され、できない理由をたくさん言われた。闘志がわいた。

 〈何もしなければ宇宙が、いや、地球が危ないんだ〉

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岡田光信さん(中央)。社員たちと下町に構えた会社の前で=東京都墨田区

ここからは岡田さんのインタビューの一問一答です。宇宙ゴミの深刻さ、そしてこの問題の解決に意欲を燃やす岡田さんの思いを聞きます。

インタビューの一問一答

 ――「スペースデブリ」と呼ばれる宇宙ゴミを掃除しないでいると、どうなるのですか。

 いつと予言することはできませんが、人類が宇宙を使えなくなる日が来ます。災害や津波の監視、金融もITも……。私たちの生活は、すでに宇宙に支えられています。使えなくなるということは、暮らしが宇宙利用を始める70年以上前に戻ることを意味します。

 観測できる大きさ10センチ…

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