只見の日本酒、海外進出 輸出向け限定免許国内第一号

上田真仁
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 福島県只見町で取れたコメを使った日本酒が22日、香港に輸出された。規制緩和によって、輸出用に限り日本酒の製造を認める国内第一号の免許を地元の酒蔵が取り、販路拡大と町の活性化をめざし海外進出を果たした。

 輸出したのは、只見町梁取の合同会社「ねっか」だ。2017年4月から地元で「全然」という意味の米焼酎「ねっか」を国内外で販売する。

 香港へは「雪龍(スノードラゴン)」の銘柄で日本酒と米焼酎(ともに720ミリリットル入りで2本セット)500セットを輸出した。地元の農家4人と酒造りをする代表社員脇坂斉弘(よしひろ)さん(47)は「華やかな吟醸香が特徴の焼酎です。この技術を日本酒の醸造にも生かしました」と話す。

 日本酒の製造は国内の需給バランスなどを考慮し、これまで新たな製造免許の交付が制限されてきた。しかし、日本酒の輸出拡大に向けた組織を後押しする形で、20年度税制改正で輸出向けに限定した製造免許が新たに交付されることになった。

 ねっかは今年4月に隣町の南会津町にある田島税務署に免許申請し、翌5月に国内で初めて免許を取得した。「輸出用清酒製造免許」はすでに海外への販路を確保していることが条件で、国内販売ができない代わりに、「製造所ごとに年間6万リットル以上」の生産条件が撤廃され、少量生産によるブランド価値向上や小規模企業の参入が見込まれる。

 ねっかは米焼酎をすでに香港やロンドンに輸出していたため、条件に合致した。日本酒と焼酎を合わせ、年間約2千リットルを製造し、商社と協力して、香港に輸出する。

 脇坂さんはねっかを立ち上げる前、県内の酒造会社で働き、日本酒造りをよく知る。地元では人口減少や、農家の高齢化による耕作放棄が増えていた。「水田を守りたい」「マンパワーが必要」と思い、日本酒造りへの挑戦を決めた。

 資金面でも援軍が現れた。東北地方の中小企業、零細企業の事業・経営改善を支援し、地方経済の再生や創生を応援するファンドの運営会社「ダッチャキャピタル」(仙台市)だ。

 ねっかの製品の全国への販売拡大戦略を担うため、今年6月に新会社「奥会津ねっか」(資本金3100万円)を設立。ダッチャは3千万円を出資し、資本参加した。脇坂さんが社長に就き、ダッチャキャピタルの須佐尚康会長(73)や志村孝信社長(65)が東南アジアの市場調査や新会社の人材確保に向けたサポートをする。

 12月1日には、新商品の焼酎「奥会津」(720ミリリットル、アルコール40度)を県内や首都圏に向けて販売する予定だ。只見町であった会見で、脇坂さんは「須佐さんのご協力をいただき、新会社に体力をつけて多くのお客さんから新ブランドが愛されるよう努力したい」とあいさつ。金山町出身でもある須佐さんは「人口減少が著しい会津地方ではあるが、脇坂さんのがんばりに我々も賛同し、少しでもねっかを支援して地域事業の活性化につながることを願いたい」と意気込みを語った。(上田真仁)