廃校で造る「人類最古の酒」 ロシア出身の彼女が出会った蜂蜜と名水

岡本進
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 「ミード」と呼ばれる蜂蜜酒を造ろうと、約3年前に埼玉県小鹿野町に移住した女性が自前の商品を完成させた。「小鹿野百花」「秩父百花」と名づけた2種類を12月に初出荷する。

 山奥にある「ディアレットフィールド醸造所」で出荷に向けたラベル貼りが進む。IT会社を営む夫の宏樹さん(37)とともに移住した工藤エレナさん(33)は「優しい甘みのある酒に仕上がりました」と笑顔を見せた。

 モスクワで生まれ、研究者の父が会津大学(福島県会津若松市)に赴任したのに伴って4歳で来日した。ミードは人類最古の酒とも言われ、ヨーロッパで親しまれてきた。中世では新婦はひと月、家で蜂蜜酒を造って新郎との「蜜月(ハニームーン)」を過ごしたとされ、「ハネムーン(新婚旅行)」の語源でもある。

 23歳のとき、泊まった旅館に会津の酒造会社が造るミードのポスターが貼ってあった。「日本で、しかも地元で造っているとは」と驚き、魅せられた。自分で手がけたいと探し求めた地が、山々の花を飛び交うミツバチが生み出す「百花蜜」と国内でも名高い名水がそろう小鹿野だった。

 2017年の結婚を機に、まず酒類販売業免許を取った。町内の養蜂家たちから集めた蜂蜜を会津の会社に持ち込み、ミードを造ってもらった。移住も決め、ミード販売を長年続けた今年7月、製造免許を取得でき、ようやく地元で造れるようになった。町役場の協力を得て廃校となった中学校を酒蔵に替え、醸造所名は「子鹿(deerlet)」からもじった。準備資金はクラウドファンディングで集めた。

 今回造ったのは375ミリリットルの瓶で約3千本。会津の酒造会社長の佐藤利也さん(63)は「原料の蜂蜜と水を1カ月かけて低温で発酵させ、味のしまったミードができた。初仕込みは自分が担ったが、エレナさんは勉強家で覚えも早いのであとは安心して造りを任せられる」と話す。年間3万本の出荷をめざしている。楽天市場の「エレナ酒店」で購入できる。(岡本進)