困窮世帯に食品を 茨城にフードパントリーの輪、行政も協力

鹿野幹男
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 茨城県阿見町の女性が地元で始めた、困窮世帯に食品などを配る「フードパントリー」の活動が、県内各地に広がっている。行政も、会場を無償提供するなど協力に乗り出した。

 今月7日の日曜日、常総市の市民・福祉センター「ふれあい館」。清水直美さん(43)=阿見町=ら十数人のボランティアが、小さな子の手を引いた母親らに米や菓子のほか、生理用品などを渡していた。大手スーパーや農家が寄付した物資や、清水さんが生協からの助成金で買った品々だ。

 清水さんは昨年5月、介護施設で働く傍ら、阿見町内の仲間とともに、「ami seed(種)」と名付けたグループを立ち上げた。生活が苦しいひとり親世帯や大学生らに、食品などを提供するフードパントリーの活動をするためだ。

 清水さん自身、シングルマザーで、ひとり親世帯の苦労は知っている。新型コロナウイルスの影響で生活が苦しくなった家庭や大学生も少なくない。そうした人たちを支えたいと考えた。

 グループはこれまでに20回ほど、町内でフードパントリーを開いてきた。開催場所と日時はLINEで事前に告知しているが、地元だけでなく、筑西市や常総市など遠方から来る人もいた。それを見て、思った。困っている人にもっと近いところで活動できないだろうか――。

 その思いに応えたのが、常総市内の福祉施設でボランティアをしていた整体師の飯泉なおこさん(55)=つくば市=だ。阿見町で清水さんのフードパントリーを手伝った経験があった。その際、常総市から小さい子を連れて来た女性に出会ったのがきっかけで、同市でも開催したいと考えた。

 今年夏に活動を始め、市内の飲食店の協力を得て約10世帯に弁当を配布するなどした。すると、共感が広がり、賛同する地元ボランティアも出てきたため、規模を大きくして「ふれあい館」で催すことを決めた。

 活動を知った市も積極的に協力する。休日は通常閉館している「ふれあい館」を開館し、使用料も無料に。困窮世帯に開催を知ってもらうため、市が把握しているひとり親世帯約600世帯にチラシも配った。

 7日のフードパントリーでは、64世帯分の食品などが配られた。会場には、常総市出身の俳優・羽田美智子さん(53)も姿を見せ、配布を手伝った。親族の羽田幸子さん(55)=同市=が開催に関わった縁で駆けつけた。

 なかなか心を開かないように見えた子どもに笑顔で語りかけるうち、心が通い合ったと実感できる場面があったという。「ものを与えるのではなく、『お互いさま』という心構えで、本当に困っている人に手を差し伸べることの大切さに気づかされた」

 清水さんが阿見町で活動を始めて約1年半。さらに輪は広がる。12月12日には清水さんの活動を見学した有志が、筑西市内でフードパントリーを開く。不足物資を融通し合うなど、県内各地で主催者同士の交流も進む。

 「生理用品を買うお金がない」「ガス代が払えなくなった」。清水さんのもとに寄せられる切実な訴えは絶えない。清水さんは「大勢の困っている人をみんなで支え合う活動を続けていきたい」と話している。(鹿野幹男)