園児いまどこ? 転んだのも分かるリストバンド端末、保育業界が注目

重政紀元
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 送迎バスに取り残された園児が死亡するなど保育現場での子どもの安全確認が問題になる中、千葉市の保育園運営会社は装着型のデジタル機器を利用し、子どもの状況を可視化する対策を来春から始める。心拍数や転倒状況なども記録でき、同社はより確かな見守りにつながると期待している。

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 導入を目指しているのは、千葉市や成田市で民間保育園「キートスチャイルドケア」(計13園)を運営するハイフライヤーズ(日向高志社長)。

 可視化する具体的な方法はこうだ。園児は保育中、生体センサー機能のあるリストバンドを装着。園内に設置したセンサーと近距離無線通信ブルートゥース」で結ばれており、センサーが得た情報はクラウドシステムに自動保存される。

 保育中に子どもがどこにいるのか、どう行動したのかはすべて記録される。近距離無線を利用しているため屋外での使用は限界があるが、データ受信用の外部端末などを用意し、近距離であれば対応が可能という。

 心拍・ストレス値などのバイタルデータ、転倒などの衝撃情報も測定できる。痛みなどがあればバイタルの数値に変動が起きるため、園内に設置された監視カメラと組み合わせれば、数値が変わった際に何があったのかを特定しやすくなる。

 導入に向けて課題になるのが費用だ。センサーなどのシステム構築費は約1千万円。リストバンドは一つ5万円程度かかり、児童定員分を用意すると3千万円近くかかる。現在、国や自治体に補助制度はなく、会社側の持ち出しでやらざるを得ないという。

 取得したデータは、子どもの安全確認や問題発生時の対応以外には使用しない。同社は「まずは保護者の同意が取れた数園から始めたい」(吉田りえ総務部長)という。

 10~11月、運営する2園に通う30人を対象に実証実験を実施した。データ収集に技術上の問題がないことを確認した。参加した園児の母親(35)は「ニュースで事件を見るたび不安になっていたので安心できる」と期待する。別の母親(36)も「安全につながるのであれば保護者負担があってもいいから導入してほしい」と話し、保護者の多くも導入に前向きだ。

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 システムを開発した凸版印刷(東京)によると、2017年のサービス開始以来、導入したのは製造・食品業など三十数社。保育業界からも問い合わせは増えているが、導入した園はまだないという。

 保育業界が関心を持ち始めた背景には、子どもの安全確認をめぐる問題が各地で相次ぎ、園の存続を左右しかねないためだ。

 福岡県中間市の保育園では7月、男児(当時5)が送迎バスの車内に取り残され、熱中症で死亡。19年5月には大津市で車同士の衝突に巻き込まれ、散歩中の保育園児2人が死亡している。凸版印刷の担当者は「安全への意識が変わってきていると感じる」と話す。

 キートスでも「ヒヤリ」とするケースは起きている。昨年10月、散歩途中の公園で2歳の男児が一時行方不明になった。3人の保育士が17人の園児を引率していたが、公園到着から保育園に戻るまでの約30分の間、不在に気がつかなかったという。

 別の園では昨年、虐待の疑いをもたれた。保護者から「子どもにあざがあり、『先生につけられた』と言っている」という問い合わせを受けた。解決につながったのは数カ月前に全園の保育室、廊下に設置したばかりの監視カメラだった。子どもの様子をすべて確認できたことで、保護者の納得を得られたという。

 日向美奈子統括園長は「これまでは『問題がなかった』という証明は難しかった。装着型端末の情報を利用できればトラブル時の確認はさらにしやすくなる。保護者、保育士双方の不安解消になるとともに、保育の質を向上させるための客観的なデータにもつながると期待している」と話す。(重政紀元)

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    藤井涼
    (CNET Japan編集長)
    2021年12月2日18時43分 投稿

    【視点】保育現場での事故防止や、多忙な保育士さんの業務負担の軽減のために、保育園へのテクノロジー導入は今後ますます必須になっていくでしょう。たとえば、乳幼児の昼寝を見守る「ルクミー午睡チェック」や、スマート体温計サービス「ルクミー体温計」などを展開