奈良がわかる! 高松塚古墳の壁画 来年は発見50年だね

清水謙司

奈良がわかる!

オシドリの「はなくいどり」は朝日新聞なら総局の公式キャラクター。正倉院宝物にも描かれた吉祥文様です。花をくわえて、最新のニュースや身近な話題を求めて県内を飛び回ります。

[PR]

 はなくいどり 高松塚古墳奈良県明日香村)の壁画が発見されて来年で50年になるって?

 A 1972年3月21日、学生とともに古墳を発掘調査していた故網干善教・関西大名誉教授(当時は助教授)が盗掘穴から、石室内に描かれた人物像らしきものを見つけたんだ。網干氏から連絡を受けた故末永雅雄氏が当時所長だった県立橿原考古学研究所(橿考研)が同26日に発表。考古学ブームが巻き起こり、文化財報道も一気に盛んになった。

 は なぜそこまで注目されたの?

 A はるか昔(7世紀末~8世紀初め)の円墳の石室の壁に、様々な極彩色の絵が描かれ、残り続けていたのがすごすぎる。同27日付の朝日新聞は、橿考研や文化庁への取材を基に、「法隆寺級の壁画発見」「戦後最大の発見」などの見出しを付けて報じた。74年には国宝に指定された。

 は 壁画はどんな石室に描かれていたの?

 A 高松塚古墳の石室は、16枚の凝灰岩の切り石を組み合わせたものだ。万葉集でもおなじみの二上山で産出された。石室内部は奥行き約2・6メートル、幅約1メートル、高さ約1・1メートル。壁画は東、西、北の壁石と天井石で確認。内面に塗られた漆喰(しっくい)の上に描かれていた。

 は 「飛鳥美人」は知っているけど、ほかに何が描かれていたの?

 A 人物像から言うと、東壁と西壁には計16人の男子と女子が描かれていた。西壁の女子群像は「飛鳥美人」と呼ばれ、特に有名だ。朝日新聞は発見当初は、「婦人像」の名で紹介していた。西壁には白虎と月像、東壁には青龍(せいりゅう)と日像もある。北壁には玄武、天井石には金箔(きんぱく)で星を表すなどした星宿図がある。

 は 南の壁石は?

 A そこには幅73センチ、高さ37センチの盗掘穴があけられていた。中国古代思想で方角の守護神とされる四神の青龍、白虎、玄武は描かれているのに、朱雀(すざく)は見つかっていない。朱雀は南方を象徴する。盗掘で失われた可能性も指摘されている。専門家の論文によると、高松塚古墳は13世紀前半に盗掘されたという。日像の金箔や月像の銀箔(ぎんぱく)は、かき取られた痕跡がある。

 は 壁画はいまどうやって守られているの?

 A 壁画はいまは古墳の中にはない。2004年にカビなどによる劣化が判明。その後、石室ごと解体して墳丘から取り出す異例の措置を取り、村内の仮設修理施設で長く修理が続いた。約13年に及び、昨年3月に終わったばかり。文化庁は08年から毎年施設を一般公開している。年に数回あり、ガラス窓越しに壁画を無料で見学できる。

 は 修理が終わった壁画は今後、どこに置くの?

 A 文化庁の検討会は14年、修理終了後も「当分の間」と条件付きで、古墳の外で保存する方針を示した。カビの再発防止などの技術が確立されていないことが主な理由だった。

 検討会では、壁画を保存、管理する新施設のあり方について、専門家が知恵を出し合っている。調査や研究の部門を設けることも検討している。かけがえのない文化財を守ることを通じて、古代史や飛鳥地域にさらに関心が深まるような施設になればと思うよ。

 それにしても、美しい壁画に囲まれた被葬者は一体、どんな人物だったんだろうね。(清水謙司)

高松塚古墳や壁画を学べる施設

奈良文化財研究所飛鳥資料館(明日香村) 石室の実物大模型があり、石室解体の際に使われた特別な機具(治具(じぐ))も展示。前庭には解体実験用につくられた石室の実物大レプリカも。

高松塚壁画館(同) 発見当初の壁画を忠実に模写した「現状模写」や、石室の盗掘穴から内壁の壁画を見ることができる石槨(せっかく)の模型などがある。

奈良県立橿原考古学研究所付属博物館(橿原市) 発見当時の色彩や質感が忠実に再現された西壁女子群像(飛鳥美人)の複製陶板は一見の価値あり。

関西大学博物館 高松塚古墳壁画再現展示室(大阪府吹田市) 同館の前にある。美術陶板で石室を再現。同古墳の発掘調査をはじめ、関西大と明日香村は深い関わりがある。