どこまでが災害関連死? 「地震さえなければ」が認定されない事例も

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藤原慎一
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 増え続ける災害関連死について内閣府が4月、事例集を作成した。認定の基準がなく、自治体ごとのばらつきが課題となっているためだ。だが、掲載されているのは一握りのケースのみで、申請の対象外におかれたままの遺族もいる。関連死の実態をより正確に、網羅的に把握することは将来の予防にもつながるとして、国が調査や分析を主導するよう求める声は多い。

 事例集が扱うのは、2011年の東日本大震災や、16年の熊本地震、18年の西日本豪雨など八つの災害。被災後に亡くなった人のうち、98人分の性別や年代、経緯を記載する。個人が特定されないように災害は「豪雨」や「地震」などとだけ記されている。

 「豪雨」では、猛暑のなかで自宅の片付けをしていたところ体調を崩し、肺炎で亡くなった80代男性の例などを列記。「地震」では、避難後にうつ状態になって自死した70代男性の例も取り上げた。

 西日本豪雨の際、岡山県倉敷市の高齢者福祉施設に入所し、避難後に亡くなった高見美恵子さん(当時89)も匿名で載る。

 事例集は、高見さんが施設から自衛隊に救助されたことや、避難所で発熱し入院したこと、転院後に肺炎で亡くなったことを「死亡までの経緯」として記録。「被災による避難行動により、肺炎での死亡につながったと推測され、死亡と災害との間に相当因果関係があると認められた」とまとめた。

 長女の紀子さん(68)は事例集で初めて、母の関連死が認定された理由を知ったという。「遺族にとっても貴重な情報が詰まっている。大事な人の死と向き合うためにも、積極的に公表してほしい」と話す。

 ただ、掲載事例数は決して多くない。対象とする八つの災害は、関連死者数が計4千人を超えるが、事例集に載るケースはその3%にも満たない。

 「98事例がいかに限定的な公開か」。西日本豪雨から3年が過ぎた今年7月、被災地の岡山弁護士会が内閣府の事例集について、不十分さを指摘する会長声明を出した。

 西日本豪雨は特に被害が大きかった岡山、広島、愛媛の3県で279人が犠牲となり、関連死は80人を超える。だが事例集が公表したのは33人分にとどまる。

 会長声明は「事例を多く集積していくことが災害関連死の予防に役立ち、先例が多いほど認定の地域ごとのばらつきを防げる」と指摘。内閣府がまず500事例を集め、分析・公開することを求めた。一方、内閣府の担当者は取材に「これ以上の事例のとりまとめは考えていない」と答えた。

 高知県立大の神原咲子特任教授(災害看護)は「現状では、事例の数も分析もまったく足りない」と指摘する。「関連死を防げなかった現実を直視し、今後の避難体制の見直しや防災政策につなげるために、国はさらに事例の収集と公開を進める必要がある」

 事例集の調査・分析の対象にすらならなかったケースもある。遺族が関連死認定の申請対象外とされ、自治体に申請できないでいる場合だ。

 震度7の揺れに2度見舞われた2016年4月の熊本地震。熊本県内の災害関連死は11月12日時点で223人に上り、犠牲者全体の8割を占める。内閣府の事例集も自治体の認定をもとに、熊本地震の関連死を取り上げている。

 特に揺れが大きかった益城町の高台の集落に、家の主を失い更地になった区画がある。

 かつて衆院議員も出た地元の…

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