半分玄米、新しいコーヒー完成 甘い香りに込めた地元と農家への思い

戸田和敬
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焙煎士 藤井勇也さん(32)

 広島県東広島市の古米(玄米)とブラジル産のコーヒー豆を焙煎(ばいせん)したコーヒーを完成させた。「Rice」と「Coffee」をかけ、「Rico(リコ)」と命名。スペイン語で豊かさ、おいしさを意味する言葉だ。

 通常のコーヒーより香りはほのかに甘く、通常の1・5倍ほど深煎りにした豆と古米を同じ割合で混ぜることで、ブラジル産ならではの苦みも残す。余った古米を活用し、環境にも配慮した。原爆ドーム前の相生橋付近のビルに構える焙煎所で、1年以上をかけ、商品化までたどり着いた。

 東広島市とブラジル・サンパウロ州マリリア市が親善都市であることに着目した。南米では、戦前に多くの日本人移民がコーヒー農園で契約移民として働き、生産現場を支えた。「コーヒー産業の歴史は移民史そのものだと言っても過言ではないと思う。知ってから飲むと味が違う」

 国内最多の海外移民を送り出した「移民県」広島の中でも移民が多かった広島市南区の仁保地区出身だ。図書館司書だった父の話でかすかに頭にあった移民史は、「コーヒー」を学ぶにつれ深まった。

 学生時代、カフェを開くことを思い描き、コーヒー産業を独学。生産から消費まで世界中の国が関わっており、移民の動きとともに広まった歴史も知った。「生産現場を見て歩きたい」と思い、世界18カ国を旅した。中米では農園を視察し、豆の収穫作業も体験。「手に取ったコーヒーの実の香りから、農家が精魂込めた仕事が染み込んでくるような感覚がした」

 コーヒー農家を守るための取り組みでもある。Ricoは豆の消費量を減らし、需要と供給のバランスを保つための新たな飲み方につながり、「SDGs」の課題解決手段の一つになることも見込む。「一杯のコーヒーから、生産を支えた移民、消費という課題にも目を向けてもらいたい」(戸田和敬)