元気な豚は「ブーブー」、風邪引くと「ゴホン」 せきの音AIで検知

足立優心
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 「ゴホンゴホン」。豚も風邪を引けば人間と同じようにせきをする。呼吸器系の疾患が広がると、発育の遅れや肉質の低下につながる。そこで、豚が発する音をAI(人工知能)で解析し、せきを検知して良質な豚を育てることにつなげようという実験が、神奈川県厚木市飯山の養豚場「臼井農産」で始まった。

 いくつもの豚舎が並ぶ同社の養豚場の一角。約270頭を育てる300平方メートルほどの区画に、天井から縦25センチほどの円形の検知器がつるされている。ドイツの製薬会社、ベーリンガーインゲルハイム社の「サウンドトークス」だ。

 豚の発する音を解析し、結果をライトで知らせる。せきを検知していないときは緑色に発光し、せきの可能性があれば黄色に変わる。多くの豚がせきをしたり、深刻なせきをしている豚がいたりすると赤色に点灯し、生産者が持つ端末のアラームが鳴る仕組みだ。

 「病気に気付くのが遅れれば豚の調子も悪くなり、放っておけばほかの豚にも影響がある。調子の悪い豚を抜き出して早めに治療すれば重症化せずに立ち直ることができる」。臼井農産の臼井欽一代表は、こう話す。

 豚の病気は、風邪やインフルエンザなど呼吸器系のものが多いという。病気になると体が細くなったり死んでしまったりするため、毎日丁寧な見回りが欠かせない。同社では約5千頭の豚を育てており、朝と夕方に7、8人で分担して豚舎を見回るという。

 元気な豚の鳴き声は「ブーブー」と重低音。風邪を引くと、人間と同じように「ゴホンゴホン」とせきをする。肺炎などに重症化するとオットセイの鳴き声のような音に変わる。軽い症状のせきの場合、慣れていないと聞き分けが難しい場合があるという。

 導入した検知器は、軽症のせきも検知できるとされる。体調悪化のサインを見逃すことが減ることや、これまでのような丁寧な見回りをする必要性がなくなり、省力化につながることを期待しているという。検知器は豚のせきの他、豚舎の温度や湿度も記録し、異状があれば通知するという。

 実験はNTT東日本との3社共同で実施。NTT東日本が総合的な支援を行い、ベーリンガーインゲルハイム社が結果を分析し、国内での商用化を目指す。

 臼井代表は「これからの季節は特に乾燥してのどや鼻の粘膜が痛みやすく呼吸器系の病気になりやすい。新型コロナと同じで、豚も早めに手を打てれば重症化せずに立ち直ることができる」と期待を語る。(足立優心)