(新潟 食の風景)9割近くが県外に出荷 聖籠町の砂里芋

友永翔大
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 砂地では育てづらいとされる里芋が、新潟県の北部、聖籠町と隣の新発田市の砂地で栽培されている。しかも、一般的な種類の2倍で取引される人気ブランド。飛躍のきっかけは、栽培の「敵」だったはずの砂にあった。

 「初めは、もうからなかった」と振り返るのは、聖籠町の生産農家、小林八寿夫さん(62)。不向きな土地ではあったものの、盛んな果樹栽培向けの灌漑(かんがい)設備が整っていたこともあって、1965年ごろには付近で里芋が栽培されていたという。

 とはいえ、その規模はごく小さく、出荷も地元の市場に出す程度。それが2005年、主力作物として本格栽培に踏み出した。JA北越後(新発田市)の高橋光男さん(現営農販売部長)が「新潟一になろうぜ」と、小林さんら3人の生産者に持ちかけたのがきっかけだった。

 当時、県内の里芋市場は五泉市産が席巻していた。「五泉の一人勝ちが悔しかった」と高橋さん。ただ、その後も知名度不足から「相手にされなかった」と小林さんは話す。

 転機は4年後にやって来た。ネギの出荷先だった名古屋市の市場担当者から高橋さんは相談された。「土臭くない里芋がほしい」

 それならば、と砂地で育てた里芋をサンプルで送ってみたが、返事がない。心配して連絡をとってみると、返ってきたのは「どえりゃあ良いですね」という反応だった。出荷量が需要に追いつかず、名古屋の業者が2トントラックで新潟まで受け取りに来たことも。県外の大きな市場での人気ぶりに、「自信がついた」と高橋さんはいう。

 その後、東京の大田市場など首都圏へ販路を拡大。13年に「砂里芋」と名づけて商標登録し、全国ネットのテレビ番組で紹介されたり、スーパー大手・イトーヨーカドーのプライベートブランド自主企画商品)に選ばれたり。出荷先は文字通り北海道から沖縄まで全国に広がり、「引く手あまた。生産が追いついてない」と高橋さんはうれしい悲鳴をあげる。

 人気の理由は「土臭くない」以外にもある。一つは、ほかの里芋と比べて甘いこと。「水分が制限されればトマトの甘みが増すように、里芋にも同じことが起きているのではないか」と栽培農家の小林さんは推測する。ねっとりした粘りも特徴。さらに、種芋から数珠つなぎ状に育つ芋のうち、先端にできる「孫芋」は煮ると柔らかく、それでいて弾力も保つそうだ。

 ただ、砂地での栽培は苦労が絶えない。里芋は水分を好む野菜で、砂里芋にも毎日の水やりが欠かせず、夏場には2~3時間ほど水を与え続ける。水はけが良いため肥料分が流れやすいが、与えすぎると形が崩れるという。形を丸くする作用のあるカルシウムを補うが、これも多すぎると肥料の窒素と結合してしまい、肝心の芋まで行き渡らないそうだ。

 夏の適度な雨で豊作に恵まれた昨年度、JA北越後出荷分の販売額は約1億4500万円に上り、過去最高だった。「病気を防ぐための土地改良と、有機肥料の使用で費用がかかる」と高橋さんは話しつつ、JA北越後として、さらなる売り上げ増をめざしている。(友永翔大)

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 砂里芋(さりいも) JA北越後の農産物直売所「こったま~や」(新発田市)などで購入でき、聖籠町のふるさと納税の返礼品にもなっている。生産者は20戸ほど。収穫は11月中に終わり、出荷は翌年3月ごろまで続く。